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法然上人と知恩院

伊藤唯眞猊下のお言葉

2015年5月

『心を育み、日々の生活に潤いを』総本山知恩院門跡 伊藤唯眞

最近の世情を考えてみますと、人と人とがお互いに敬愛する心を持たず、家庭にも学校にも社会にも潤いがなくなってきているように感じます。経済が発展してきたのはまことに結構なことですが、その反面でなにもかもを損得勘定で判断する習慣がついてしまったのでしょうか。自分さえ生きていければいいという考え方が強くなり、人と人とのつながりが失われてきています。

お念仏の教えの基本は、反省と、その反省から生じてくる自覚にあります。法然上人のような方でさえ自らを「愚痴の法然房」と称しておられました。私たちも、自分自身を日々省みていくと、至らない姿に気づかされていくはずです。そして、至らなさを自覚したときには、阿弥陀さまの救いの力を信じてお念仏し、心を調えていこうという意志が芽生えてきます。反省の心から自覚が生まれ、自覚から向上心が生じるのです。

このようにお念仏を称えるなかで豊かな感情を育んでいきますと、自分は一人で生きているのではなく、他人から支えられて、もっと大きく言えば社会全体から生かされて生きているのだと思えるようになっていきます。生かされていることをおかげさまと喜べたなら、今日失われつつある生活の潤いが取り戻されてくるはずです。家庭内では親子や兄弟がおたがいに仲良く暮らし、学校では一緒に学び合う良い友人関係が築けるでしょう。

私たち人間は、体とともに心を持っています。心を豊かなものにしていくことが大切です。手には数珠を持ち、声を合わせてともに念仏を称え、至らない自分を日々自覚するなかで、心に人間らしい潤いがもたらされてくれば、体もまた活き活きとしてまいります。皆さまとお念仏の生活を過ごしてまいりたいと願っています。



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