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法然上人と知恩院

伊藤唯眞猊下のお言葉

2016年7・8月

『お盆の精神を現代に生かす』総本山知恩院門跡 伊藤唯眞

旧暦7月15日は道教の思想である三元のひとつの「中元」にあたります。江戸時代にはこの「中元」の時期に、街の商店に勤める人が店の主人から手土産をもらって故郷に帰る習慣が定着しました。これは勤め人の楽しみであり、先祖を祀り、生御霊(いきみたま)の親に感謝する大事な機会でもありました。今でもお世話になった方に贈るお中元や賞与(ボーナス)という形で残っています。賞与は7月のお盆の前に貰うのが一般的で、本来は労働に対するものではなく、ご先祖様をお祀りするための準備資金として使われていました。

お盆に行われる盆踊りは、満月の明かりの下で帰ってきたご先祖様と一緒に踊る行事です。念仏踊りが先祖を供養する盂蘭盆会と結びつき、盆踊りとなりました。高く組んだ檀上の真ん中に位牌を置いたり、背負って踊ったりすることもありました。還ってきた祖(おや)たちと一緒に踊っていたのです。

最近は故郷に帰ることなく、先祖抜きのお盆を過ごす人が増えてきています。都会へ移住する親も増え、故郷崩壊の時代でもあります。家族や親戚で集まり、自分たちを育ててくれた親、支えてもらった人の話をして、宗教性のある時間を過ごすことが大切だと思います。亡くなった人と一緒に過ごす交感の機会を作り、家族の結束をもっと深めていかなければなりません。

また、お盆には祀ってくれる人がいない無縁仏のために無縁棚を作ります。あらゆる霊魂に対して供養するのが日本人のおもてなしの心(ホスピタリティ)です。見えるものだけを尊重して、他は排除する考え方がありますが、現実の世界は見えないものに支えられて作られています。お盆を単なる夏の風物詩だけで終わらせずに、お盆の精神を現代社会に生かしていくべきです。お盆は私たちを育んでくれた方に感謝し、生きる力をいただく季節(とき)なのです。



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