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法然上人と知恩院

伊藤唯眞猊下のお言葉

2016年10月

『月と仏法』総本山知恩院門跡 伊藤唯眞

平安時代、涼やかな中秋の季節に、月に照らされながらお念仏する人たちの姿がよく見られました。月は「真如の月」と呼ばれ、仏法を示すものとして考えられていました。比叡山では陰暦の10月11日から7日間、堂内を行道し、月に向かってお念仏しながら阿弥陀経を称える常行三昧(じょうぎょうざんまい)が行われていました。円仁(えんにん)が唐から曲節をつけた阿弥陀経の称え方を伝えたのが始まりで、不断念仏ともいわれ、各地へ普及し、法然上人がおられた頃には「山の念仏」として年中行事化していました。阿弥陀経の読誦と神秘的で荘重、かつ情緒ゆたかな曲調で称えられるお念仏に、人々は魂をゆさぶられました。

お十夜は陰暦の10月5日夜から満月の15日朝まで、10日10夜にわたりお念仏を称える法要です。『無量寿経(むりょうじゅきょう)』では「この世で十日十夜善行を行うことは、仏の国で千年善行を行うことよりもすぐれている」と説かれています。室町時代に平貞国(たいらのさだくに)が京都の真如堂で不断念仏を修したのが起源とされています。浄土宗では、鎌倉光明寺の第九世観誉祐祟(ゆうそう)上人が後土御門(ごつちみかど)天皇に招かれ、真如堂の僧と引声(いんぜい)念仏を修し、天皇から勅許が下がりました。その後、全国の浄土宗寺院でも十夜法要が行われるようになります。

民間においては東日本で「十日夜(とおかんや)」、西日本で「亥子(いのこ)」と呼ばれ、自然の恵みに感謝する収穫祭が行われます。十夜袋に新しく収穫されたお米を入れて仏さまにお供えしたり、わら束をくくって地面にたたきつけ、その呪力によって生産増大を願ったり、地域ごとに伝わる様々な行事があります。お十夜は収穫祭と先祖供養が結びつき、お念仏が入り込んだ生活仏教として人々に受け入れられてきました。

お十夜には阿弥陀さまに手を合わせ、念仏をお称えし、美しい月を眺めながらご先祖さまに思いを馳せてみてください。



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