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法然上人と知恩院

伊藤唯眞猊下のお言葉

2016年12月

『年の終わりに心を清める』総本山知恩院門跡 伊藤唯眞

大晦日の夜半には、全国のお寺で鐘の音が響き渡ります。知恩院の大鐘の除夜の鐘は、昭和4年にNHKの要請を受けて始まり、それ以後、宗教的な歳末の恒例行事として庶民に親しまれています。それまでは御忌大会などの大きな法要の時にだけ撞かれていました。

除夜とは12月31日の大晦日のことをいいます。一年の最後の日に罪、穢れを取り除き、心身を清めて新年を迎えるという日本人の古くからの考え方が根底にあり、鐘の回数は、108煩悩を滅するためと言われています。

仏教において、煩悩の根本は三毒(貪り、怒り、愚かさ)であり、煩悩を滅することは難しいです。法然上人は「浄土宗の人は、三心(至誠(しじょう)心、深(じん)心、廻向発願(えこうほつがん)心)をよく心得てお念仏すべきです。煩悩が起こるとき煩悩を心の客人とし、念仏を心の主(あるじ)とすれば、必ずしも往生の妨げにはなりません。逆に煩悩を心の主として、念仏を心の客人とすることは、偽善となり往生は損なわれてしまいます。外から入ってくる煩悩をお念仏で送り出さなければいけないのです」と述べておられます。(「七箇条の起請文」『和語燈録』)

知恩院では親綱を引く僧侶と子綱を引く16人の僧侶で、「えーい、ひとーつ」「そーれ」の掛け声のもとに独特の撞き方をします。一打ごとに、3人の僧侶が南無阿弥陀仏と三回称え、五体投地の礼拝を一回行います(三唱一礼)。大鐘の銘文には南無阿弥陀仏の名号が彫られています。お念仏を称えて鐘を撞くことに意味があるのです。

「雪のうちに 仏のみ名を 唱ふれば つもれる罪ぞ やがて消えぬる」という法然上人の冬のお歌があります。雪が降り積もるように、私たちの罪も積もっていきますが、お念仏を称えると阿弥陀さまのお慈悲の光によってすぐに消えていくのです。このお歌が思い出されるような雪の夜に除夜の鐘が撞かれることもあります。その際にもお念仏をお称えして、煩悩を起こさないようにしたいものです。

皆さんも年の終わりに南無阿弥陀仏とお称えし、煩悩を除いた清らかな心で新年をお迎えください。



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