English
文字サイズ フォント小フォント大

おてつぎ運動

特集記事

2017年1月

『プロの役者と浄土宗僧侶が共演 演劇「法然さま in 増上寺」』

11月19、20日に大本山増上寺の光摂殿ホールで演劇「法然さま in 増上寺」が行われ、全3公演で1000人を超える観客を動員し、盛会に終わった。

僧侶が演劇に挑戦

制作委員長の鈴木定光さん(左)と企画運営に携わった日比野郁皓さん(右)

法然上人(左から2番目)の声は俳優で浄土宗僧侶の成田次穂さんが務めた

この企画が持ち上がったのは約1年半前。東京教区では有志が集まり制作委員会を結成した。繰り返しミーティングを行い、劇団「コメディ オン ザ ボード」が2010年に公演した「救いの人・法然さま」の台本をアレンジし、新たな演劇に生まれ変わらせた。制作委員長で東京教区心行寺住職の鈴木定光さんが、浄土宗東京教区、東京教区青年会、東京教区吉水講、増上寺などに協力を呼び掛け、多くの僧侶が特別出演した。

稽古は本番1カ月半前から榧(かや)寺、心行寺などで毎日行われた。企画運営を担当した東京教区榧寺住職の日比野郁皓さんは「稽古中も演出に関して自由に言わせていただき、非常に柔軟に受け入れてくださいました。お念仏の雰囲気も回数を重ねるごとに変わり、だんだん迫力も出てきました。最後はみんなの力が結集したのが分かり、法然上人が浄土から見守ってくださっている気がしました。義太夫、人形劇、歌舞伎なども取り入れられており、日本の文化的な部分も見せることができたのでは」と話す。スタッフ総勢100名ほどのスケジュール管理やお弁当の手配などの事務作業は、心行寺の鈴木哲哉さんが行い、ポスターのデザインは波岡霞さんが手掛け、裏方で大きな支えとなった。

法然上人の生涯を感動的に描く

東京教区吉水講の美しいご詠歌が会場中に響き渡った

住蓮・安楽を演じる池田智光さん(右)・善光さん(左)の息の合ったお念仏

双盤念佛を行う原善順さんと東京教区青年会の僧侶

演劇は法然上人の生涯を6つの章に分け、歌や笑いを織り交ぜながら、感動的に描かれていた。20代から70代までのプロの役者さんたちの熟練された演技。詠唱やお念仏の美しい声。宝石のような言葉が散りばめられた台本。9歳の時に父親が殺され、15歳で母親と別れて出家するという悲しい場面も「限界までいくと悲劇も喜劇に変わる」という劇団の理論に基づき、柔らかく表現されていた。一人が何役もこなす早変わり、洒落た作りの小道具など細かい部分にまでこだわりが見えた。

前回はテープで声だけを流していた法然上人の弟子の住蓮・安楽は、東京教区智福寺の池田智光さん(40)・善光さん(37)の兄弟が演じ、終盤に観客席後方から礼讃を称えながら花道を通って登場した。善光さんは「自分が住蓮になることに不安はありましたが、貴重な経験ができました」と話し、智光さんは「手を合わす観客もあり、印象的でした」と振り返った。舞台上のプロの役者さんたちも客席の様子を見て「こんな光景は初めて」と驚くほどだったという。お念仏の中心となる双盤念佛を行った東京教区正定寺の原善順さん(30)は「8年ほど前から法式の稽古はしていますが、双盤念佛は初めての経験でした。役者の方がいい雰囲気を作ってくださっていたので、自分もお念仏を広めたいという強い気持ちで臨みました」と話した。

大念仏で会場全体が一つに

一番の見どころは、法然上人の御影に向かって東京教区青年会の僧侶たちがお念仏を称えるラストシーン。舞台上だけでなく、観客席の周りからもお念仏の声が響き渡り、会場全体が盛り上がりを見せた。「法式、詠唱などそれぞれの分野のトップが集まって演劇をすることは初めての試みで、みんなが緊張していました。350人規模のそんなに大きくない会場だったからこそ、観客にもその緊張が伝わり、一体感が生まれたのだと思います」と制作委員長の鈴木定光さんは話す。他宗派の方や一般の方も多く来られ、公演後には「最後のシーンは涙が出た」「勉強になりました」という声が聞かれた。

心行寺、榧寺、清光寺、東漸寺、善光寺の5カ寺では、演劇鑑賞のために団体参拝が実施された。増上寺の特別拝観や昼食も含んだツアーで100人ほどが集まり、大変好評だった。また、入口近くには“増上寺カフェ”が開かれ、寺庭婦人や若い僧侶、台湾の尼僧、仏米人などによって抹茶ともみじ饅頭が振る舞われた。

日比野さんは「法然上人の御恩に報いるためだからこそできたのだと思います。忙しい中、協力していただいた皆さんに本当に感謝しています」と公演後にほっとした表情で話した。今後は日本語、中国語、英語の3カ国語の字幕付きDVDを制作する予定にしている。外国の人から見ても分かりやすく、親しみやすい作品であるため、国内だけでなく海外布教の一助にもなり、より一層お念仏の輪が広がることが期待される。

(取材・文 国松真理)



▲ ページのトップへ