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おてつぎ運動

特集記事

2017年5月

『大地震から1年を迎えた熊本の今』

4月14日で熊本地震発生から1年を迎えた。未だに先の見通しが立たず、不安を抱えて生活している人は多い。こころの拠り所が必要とされる今、僧侶たちは、被災者のメンタル面を支える活動を続けている。

被災者のこころに寄り添う

茶話会が行われた集会所(左)と仮設住宅(右)

茶話会では手作りの綿菓子が振る舞われた

熊本教区では、地震で大きな被害を受けた熊本県益城町(ましきまち)の仮設住宅の集会所を借り、10月から月に一度、茶話会「喫茶BO-SUN(ぼーさん)」を開いている。5回目の開催となった3月15日は、初めての方を含め、60名近くが参加し、賑わいを見せた。時が経つにつれ、ボランティアの数やイベントが減ってきている中、ある女性(77)は「人と話すだけで元気が出ます。このような場を作ってくださるのは本当に有り難いです」とこの日を心待ちにしていたという。

益城町には浄土宗の寺院がないため、住民とのつながりを一から作り出す必要があった。熊本教区浄土宗青年会会長の藤森法明さん(41)は「事前にチラシを配りに行くだけで、涙を流して喜んでくださる方もいます。回数を重ねるごとに住民との絆も深まってきています」とやりがいを感じている。熊本教区の研修会で、「ともいき財団」の伊藤裕子先生から傾聴について教わってきたことを実践し、僧侶の原点に戻りながら、相手の話に耳を傾け、こころに寄り添うことの難しさと向き合っている。基本的に宗教活動は行わないが、仏壇や納骨について相談されることもあり、臨機応変に対応しているという。「今後は少人数でも受け入れられる体制を作り、回数を増やしていければ」と藤森さん。茶話会が終わり、住民は和らいだ表情で集会所を後にした。

避難所で炊き出しの準備をする僧侶ら(6月29日、広安西小学校)

ここで活動している僧侶の多くは、地震直後から恐怖心と戦いながら、瓦礫撤去や支援物資の配送、避難所での炊き出しに力を注いできた。4月は毎日、5月以降は週に一度のペースで、7月まで作業を続けた。被災した側も支援する側の僧侶も状況が違い、お互いに申し訳ないという気持ちを抱いていたが、次第に分かり合えるようになった。支援活動を通して、他教区や他宗派との新しいつながりもできたという。当時、支援物資の集積所となった、熊本教区西福寺住職の吉田徹秀さん(34)は「全国から温かい支援を受けて、言葉にならないぐらい感謝しています。いつどこで何が起こるかわからないこの世の中、次は自分たちが恩返しをしたいです」と話す。

被災地に笑顔を届ける

12月11日に開催された復興支援イベントの様子。知恩院からもお茶を届けた

九州の浄土宗青年僧を中心に活動する国際教育支援団体「テラ・ネット」は、去年の12月11日に益城町の益城幼稚園で復興支援イベント「みんなde笑おうプロジェクト わっしょい熊本in本山」を開催。太鼓や歌のパフォーマンス、ヒーローショーなど子どもから大人までみんなが楽しめる企画で盛り上がり、500人もの人が集まった。

テラ・ネットは、阪神・淡路大震災をきっかけに発足され、国内だけでなく、発展途上国でのボランティア活動も積極的に行っている。これまでに築いてきたネットワークを通して、今回の地震でも、全国から多くの募金や物資が届いたという。「行政から指定されていない避難所を支援したり、ボランティアに来ている人たちを助けたり、自分たちができることを探し、物資も必要なところに必要な分だけ送ることを心がけました」とテラ・ネット代表の堀眞哲さん(47)は振り返る。

被災者のニーズは様々で、今までの経験がそのまま熊本で生かせたわけではない。帰る場所があっても、余震を恐れ、車中泊をする人が多かったことは、東日本大震災と大きく異なる点のひとつだったという。「私たちはボランティアを通して、たくさんのことを学ばせていただいています。ボランティアは人と人の心がつながっていくもので、仲間が増えると、またこの人に会いたいという思いが生まれます。これからも小さなことをコツコツと続けていきたいです」と堀さんは語る。

取材を通して、周りに支えられて生きていることへの感謝の気持ちが強く感じられた。被災地が多くの笑顔で溢れることを願うばかりである。

(取材・文 国松真理)



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