English
文字サイズ フォント小フォント大

おてつぎ運動

特集記事

2018年3月

『僧侶とイラストレーターに生きる』浄土宗西山禅林寺派 瑞泉寺住職 中川学

知恩院の機関誌「知恩」の表紙絵を4月から担当していただくのは、浄土宗西山禅林寺派瑞泉寺住職の中川学さん。中川さんはイラストレーターとして、小説の装画や挿絵、絵本などを多数手掛け、ドイツの著名な美術雑誌にも紹介されるなど、国内外で活躍されています。僧侶とイラストレーターという二足のわらじを履く中川さんにお話を伺いました。

── 僧侶とイラストレーターになった経緯を教えてください。

「嵯峨野花譜」装画

私はお寺の長男に生まれ、小学校3年生の時に得度しました。子どもの頃から絵を描くことが好きで、漫画家になりたいと思っていました。漫画雑誌に自分の作品を投稿したこともありましたが、結局自分に漫画は向いてないと夢を断念したんです。そしてそのまま広告会社に入社しコピーライターの仕事をして、しばらくは絵を描くことから離れていました。

広告に使用するイラストは外部に発注していたんですが、ある時「小さなイラストなら自分で描いた方が早い」と思い、自分で描くようになったんです。そのことが社内に広まると、同僚からもイラストの仕事を頼まれるようになりました。

毎日たくさんの広告やイラストを手掛ける生活を6年続けて、心身ともに疲れていた頃、子どもが生まれたことや、実家から声がかかったことを機にお寺に戻りました。元いた会社から仕事の依頼を回してもらえたので、お寺にいながらイラストレーターとして独立することができました。

── イラストを描く上で、仏教の影響などはありますか?

「落語に花咲く仏教」装画

イラストを描くことと、念仏を称えることには通じるものがあると思います。

作品に自分らしさを出さず、与えられた役割をひたすらに突き詰めていくと、自然と美しい絵になっているときがあります。よそから美が降りてくるような感じですね。出版社にイラストを持ち込んだ時に「君の絵の中には君がどこにもいない」と言われたことがありましたが、そのほうが自分を超えたモノが出てくる瞬間があるんですよ。絵柄も自分で目指したものではなく、頼まれたものを無理なく描いていると自然と今の絵柄になったんです。

このことは宗派の教えと同じようなものかもしれません。自力で救われたいと考えているうちは駄目で、考えを捨て、ただほれぼれとお念仏を称えることが大事ですよね。絵も念仏も、無理に自分らしさを出そうとする必要はないんじゃないでしょうか。

── 僧侶とイラストレーターという生き方についてどう思われますか?

イラストは全てパソコンのソフトを使って描く

絵を描くこと以外にも何かできないかといろいろ考えましたが、結局上手くいかず、残ったのが絵を描くことだったんです。また、実家がお寺ということで、逃げたくても逃げられなかったのが僧侶でした。最後に残ったのがこの2つだったというわけです。イラストでお金を稼ぎながらの僧侶なので、お坊さんとして自分は失格のままだという思いもあります。しかしながら、二足のわらじの生き方はおすすめですよ。1つの仕事をしていて、どう進めていいか分からず行き詰まるとします。そんな時には一度距離を置き、もう1つの仕事を進めてみる。そうすると、詰まっていたことがスムーズに進む事があるんですよ。視点が変わることで解決策が見えてくるというわけですね。

── 最後に表紙絵に向けての思いをお聞かせください。

歴史ある「知恩」の表紙を飾ることができるのは光栄であり、一生懸命描こうと思っております。1年間のテーマとして、お坊さんのいる風景を考えています。皆さんが楽しい気持ちになるような、心が明るくなるような、そんな願いを込めてイラストを描きますので、よろしくお願いします。

(取材・文 關真章)

プロフィール
中川 学(なかがわ がく)
1966年生まれ。京都在住。浄土宗西山禅林寺派 瑞泉寺住職。
僧務のかたわらイラストレーターとして数々の書籍の装丁画や挿絵を手がけている。近年絵本の仕事にも力を入れ、2014年刊行の『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(汐文社)はベストセラーに。最新作『だいぶつさまのうんどうかい』(アリス館)。
★2018年1月末作品集『UKIYO 中川学圖案繪集』(玄光社)刊行。


▲ ページのトップへ