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おてつぎ運動

特集記事

2018年4月

『螺髪も気軽にかぶる時代!? おてらぶが提案するお寺文化とのつながり方』内村彰

部長の内村彰さん(右)と部員の三谷侑平さん(左)。コールセンター業務でお寺熱を実感した三谷さんは、昨年おてらぶに入部して内村さんを支えている

お寺、ラブ。だから、“おてらぶ”。株式会社フェリシモのユニークな部活では、らほつニットキャップ、絵心経マスキングテープなど、斬新な商品を開発し、仏教の学びがある暮らしを追求している。

人生を変えるお寺文化との出逢い

株式会社フェリシモは神戸を本社とした通販企業である。ファッションアイテムや雑貨などの商品を30~50代の女性を中心に届ける。

社員の内村 彰さん(39)は美大卒業後、大阪でグラフィックデザイナーとして8年勤め、フェリシモに中途入社。前職では商品やイベントを告知する仕事をしていたが、フェリシモ入社後は変わって自身が商品を作る立場になった。がむしゃらに商品企画を続けていたが、思うように売れない日々が続いたそう。

仕事に悩み悶々としていたある日、奈良県にある当麻寺で写仏という精神修養ができることを知る。体験してみると「仏さまを筆で描く」ただそれだけの行為だったが、今までに無いおだやかな気持ちを感じ心が洗われた。写仏をした後に仏像拝観をし、そこで祀られていた四天王像を見た時、その威容に圧倒された。

この日の体験がきっかけとなって仏像が好きになり、仏像を祀るお寺、そして、お寺で伝える仏教そのものの考え方にも興味がわいた。もっとこの世界を知りたいと思うようになった。


家にいながら、心の迷いを感じたときに自分を見つめる習慣提案の『プチ写仏プログラム』

フェリシモおてらぶ誕生

お寺にはまった内村さんは、日常生活でもお寺文化を体験できるものを求めた。書店で販売されている写仏本などもそのひとつ。しかし、いわゆる仏画の紹介本のようなものが多く、サイズも大きく墨と筆で描く仕様が主流だった。自身の経験から「もっと気軽に、気持ちが乱れたその瞬間にできる写仏があればいいのに」と思った。そこで内村さんは、家にいながら10分くらい集中して仏さまと向き合う時間を提案する『プチ写仏プログラム』を、通販商品として開発した。

この商品を注文すると、1年間にわたり、毎月2尊の仏さまの下絵と専用半紙、カラー筆ペン、お香、テキストがセットで届く。「プチ」と銘打つには理由があり、下絵はポストカードサイズ。筆ではなくカラフルな筆ペンを使い、描きあげる間の10分間で燃え尽きるお香をセットするような、お寺で行う写仏とは違う仕様になっている。また「欲」「愛憎」「自立」など毎月違う悩みをテーマにして、本物の僧侶のお説法が書かれたテキストまで届く。

この『プチ写仏プログラム』は、ツイッターなどのSNSを中心に話題を集め、問い合わせが殺到。購入者からは「これをご縁にお寺に行こうと思った」「自分の家の宗派を始めて知った」などの声が届いた。お寺文化や仏教の教えは今の世の中にマッチすると実感した内村さんは、2014年、もっと広くお寺文化を生活者に伝えるために〝お寺文化から心豊かな暮らしのヒントを見つける〟をコンセプトとした「フェリシモおてらぶ」を結成した。

商品に仏教エッセンスを込めて

フェリシモには、おてらぶの他にも猫部、臨床美術部などが存在する。これらの部活は、〝独自性、事業性、社会性〟を兼ね備える仕組みをつくりあげ、それぞれの大事にする世界から社会をよくすることを目的に活動する。例えば猫部では、猫好きの人たちがほしいと思うグッズや服を企画販売する一方、猫の殺処分などの社会問題と向き合う。おてらぶも商品を企画するだけでなく、お寺が百年先も存在するために何ができるかを共に考える活動も行う。

部活で商品を企画する際、上司からはよく「私には良い商品か判断できない」といわれるのだそう。生活者の暮らしを豊かにするというコンプライアンスがブレていなければ、あとは現場に任されるというのもフェリシモの部活システムの面白いところ。部員は商品の隅々にまでこだわって、世の中に二つとない商品を生み出す。

おてらぶの部長となった内村さんも、部員たちやときに僧侶やお寺文化に関係する人々とともに、お寺ファンの心をくすぐるヒット商品をいくつも世に出してきた。2016年に東京国立博物館で開催された「櫟野寺展」にあわせて作られた、らほつニットキャップはSNSで大きな反響を呼び、ショップ入荷後2日ほどで完売。追加入荷後も即売した。2017年同博物館開催の「運慶展」では邪鬼をモデルに、もちもち邪鬼ポーチを販売。また、2018年「仁和寺展」では千手アームクッションを販売して話題を呼んだ。

モチーフの情報をリーフレットやカードにして商品とセットするのも、おてらぶらしい心配りである。「邪鬼は神仏に懲らしめられますが、滅されるわけではありません。改心すれば仏前を照らす役目や、神仏を守る役割をもらいます。仏教的な慈悲の考えが仏像ひとつにも現れているのが面白いんです」と内村さんは商品に込めた想いを嬉々として語る。


如来の頭髪「らほつ」を手編みで再現した
らほつニットキャップ」


今までにない存在感と肌触りがやみつきの
「もちもち邪鬼ポーチ」


パソコン作業に疲れたうでを癒やす
「千手アームクッション」

新しい〝場作り〟の提案

おてらぶではいま、お寺好きの人々にお寺を知ってもらう“場づくり”を進めている。例えば新しい巡礼地ルートの開発。地域性や、僧侶の人となりを生かしながら、今の時代に合う巡礼ルートをつくることで、新しい人の流れができるはずと狙う。他人にはいえないような縁に寄り添う巡礼や、共通のテーマで法話を聞かせてくれる巡礼など。しあわせの価値観が細分化された今だからこそリーチできるものがあるという。

「私たちはお寺が好きで活動していますので、お寺に迷惑をかけないのが大前提です。そのうえで、お寺文化に触れ、学びを求めるファンとともに活動をしていきたいです」と内村さんは、お寺とともにある未来の社会を願った。

(取材・文 池口龍法)

プロフィール
内村 彰(うちむら あきら)
昭和53年大阪府堺市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒。大学卒業後、大阪のデザイン会社を経て、株式会社フェリシモへ入社。フェリシモおてらぶの部長として社内外のお寺好きメンバーと共に、お寺文化から心豊かな暮らしを実現する企画提案を続ける。お寺とのコラボレーションも日々意欲的に行っている。


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