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おてつぎ運動

特集記事

2018年5月

『親と子が共に成長できる安らぎの空間 サラナ親子教室 開校20周年』

上 12月に行われたお楽しみ会。母親が子どもたちに劇を披露した(祐天寺親子のひろば)
下 修了式を終えて記念撮影。卒業生には住職直筆の似顔絵がプレゼントされた(雲龍寺サラナ親子教室)

平成10年に開校し、今年で20年目を迎える知恩院のサラナ親子教室。「サラナ」とは、古代インドのパーリ語で「安らぎ」を意味し、仏さまの前で親子の絆を育み、心安らぐひとときを過ごすことを目的としている。

お寺を子育ての場に

「お寺が中心となり、乾いた子どもたちの心を、宗教情操の潤いで充たさなくては」と、知恩院サラナ親子教室が始まる契機となったのは、平成9年に起こった神戸児童惨殺事件だった。サラナ親子教室では、開校当時から、母親の心の安定が子どもたちの幸せに直結すると考え、子どもを親から預かるのではなく、親子の絆を深める取り組みを大切にしている。

現在、全国の寺院にサラナ親子教室は19校ある。今回は開校20年目の栃木教区雲龍寺、15年目の東京教区祐天寺を取材した。今年度最後の教室には、1年間の活動を終え、成長した親子の姿があった。

ののさまに見守られて

雲龍寺サラナ親子教室では、入園前の16組の親子が月に2回活動している。教室の運営を行う寺族の今井映子さんは、住職の俊宏さんと共に子どもに関わるボランティアの経験もあり、華頂誌でインストラクター養成講座があることを知り、迷わず受講して開校に至った。20年を経た今は、教室での活動も卒業生の母親が積極的にサポートしてくれているという。

この日は本堂で修了式が行われた。その後、手作りのおにぎりを食べ、母親が子どもの成長を記録した絵本を一人ずつ発表。親子らは、「母子ともに大きく成長できた」「たくさんの方と触れ合い、新しい繋がりができて良かった」と涙ながらに1年を振り返った。


【雲龍寺】本堂で木魚を打つ真剣な表情の子どもたち

教室は4月の花まつりからスタートする。同時に奉修される子育て呑龍(どんりゅう)上人祈願法要では、健やかで慈しみのある人に成長するよう願い、人形劇やお茶席などを通して、親子で楽しみながらお寺の文化や歴史に触れてもらう。教室では、毎回必ず本堂にお参りし、当番の子が仏さまにお花とお水をお供えする。1年も経てば自然と手が合わさり、お念仏がお称えできるようになる。「祖父母の家に行った時、自分からお仏壇の前で手を合わせていた」などの嬉しい報告もあるという。

自然に囲まれた境内では、四季を感じながら子どもたちがのびのびと過ごしている。水遊びや流しそうめん、落ち葉を使って焼き芋作りをしたり、りんご狩りや雪遊びで外に出掛けたり、屋外での活動も活発に行っている。講師を招いてのベビーマッサージやヨガも好評だ。

小学生が対象の書道教室や夏休みの信行道場、地域の人の交流の場となっている月に一度の「わいわい食堂」では、サラナ親子教室の卒業生の参加も多い。「卒業生は、手を合わせる作法などが自然とでき、メリハリが付いている」と映子さん。将来の人格形成に大きく影響する幼少期に仏教の教えに触れることの素晴らしさを肌で感じている。「これからも労力を惜しまず、みんなが楽しめる安らぎの場所にしたい」と話す。


【雲龍寺】みんなでのびのび体操をして心も身体もリラックス

親子で心を育む

「健やかで心優しい子どもに育って欲しい」という願いを込め、数組の親子からスタートした「祐天寺親子のひろば」は、口コミなどで入室希望者が年々増え、今ではキャンセル待ちが出るほどの人気ぶりだ。1歳児から2歳児を対象に、火曜日から金曜日まで全6クラス、合わせて70組の親子が集う。指導は子育て支援事業推進室室長の巌谷孝子さんと他数名のスタッフが行い、境内の精進殿および付属幼稚園の未就園児室で主に活動している。

普段の教室は、10時半から始まり、あいさつ、お勤め、歌やリトミック、テーマ活動、ティータイム・昼食(2歳児のみ)の流れで進められる。趣向を凝らし、毎年内容を変えているというテーマ活動は、境内散策、運動会、デコ寿司やふりかけ作り、写真立てや絵馬作りなど盛りだくさん。「続けて通ってくださる方もいるので飽きないように工夫し、私たちも内容を変えることで常に新しい気持ちで一緒に楽しんでいます」と孝子さんは話す。

本堂で帰敬式が行われた最終日。4月の開講式では堂内を走り回っていた子も、1年が経ち、落ち着いてお話が聞けるようになった。毎週同じメンバーのため、親同士の情報交換の場にもなり、「自分の子だけでなく周りの子の成長も見ることができて良かった」「集団行動を学び、幼稚園に向けての準備ができた」と子どもたちの成長を皆で共に喜び合っていた。


【祐天寺】帰敬式で「明るく、正しく、仲よく」生きることを仏さまに誓った

子どもたちそれぞれに個性があり、成長の早さも違うため、他の子と比べて不安になったり、毎日の子育てに心の余裕がなく、ストレスを感じたりすることもある。「親が変われば子どもも変わる」と孝子さんが言うように、時には厳しくアドバイスをすることもあるが、豊富な経験を生かし、子育ての相談があれば快く引き受ける。

また、日曜学校やボーイスカウト活動、「寒念仏こども大会」「少年少女精進道場」など子どもから大人まで参加できる活動を開催し、サラナ親子教室を卒業した後も、お寺とのつながりが途切れないような工夫をしている。


【祐天寺】この日のテーマ活動は「魚釣り」。親子で工作を楽しんだ

時代に応じた安らぎを求めて

知恩院では、全国の寺院でサラナ親子教室の輪を広げるために、教室で直接指導にあたるインストラクターの養成講座を毎年開催し、今年は6月に東京で行われる。知恩院おてつぎ運動本部の堀田定俊副本部長は、「知恩院で始めたサラナ親子教室も今年で20周年を迎えました。昨今の世相を鑑みると、今ほど仏教の情操教育が必要とされる時はないと思います。仏さまの前で親子で礼拝し、心安らぐ時間を共有することは大事なことです」と、今後の更なる発展に期待する。

(写真・文 国松真理)



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