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布教師会今月の法話 画像-1布教師会今月の法話 タイトル-2平成28年4月 

             「今できること できるかぎり」

 春を迎え百花繚乱、とても気持ちよい季節になりました。人の心を穏やかで、すがすがしい気持ちにさせてくれる季節の到来です。
  そのような中、とても厳しい冬を越した北国で、春の雪解けを喜ぶ「寒立馬」(かんだちめ)と呼ばれている馬たちがいます。
 そこは青森の下北半島の尻屋崎という岬、対岸は北海道、ひときわ雪も多く寒さの厳しい所です。秋になると寒立馬たちはこの地に放牧され、草を食べ冬に備えます 11月から雪に見舞われ、やがてあたり一面銀世界。雪は馬の背丈以上に、時には数メートルも積もり、やがて馬たちは身動きすらままならなくなります。僅かに残る雪下草を食んで雪の中粗食に耐えます。
 「寒立ち」とはカモシカなどが雪の中で何時間もの間、じっと動かない様子を言います。縄張り主張などと言われますが、なぜそんな厳寒の中じっとしているのか詳しくは定かでないそうです。しかし、その姿は大自然に向かい、孤高の生命力で精一杯生きているようにも見えます。
 そんな彼らの今、前にある問題は生きて春を迎えるということです。厳冬期、一面の雪原に、彼らは白煙のような息を吐くことしかできません。今、足下にある雪が消えることをただただ待つだけです。今できることはそれだけです。でも確実にこの今を一生懸命生きています。一日一日確実に生きていきます。そして、馬達はいずれの年も一頭の犠牲も出さずに春を迎えるそうです。なんとたくましいことでしょう。
  私の住まいするお寺近くのご出身である椎尾弁匡大僧正に
「時はいま、ところ足もと そのことに 打ち込むいのち 永遠(とわ)の御(み)いのち」というお言葉があります。
  今、何が大切か。この一瞬をできる限り努力をする事です。人は、ついつい先を見て焦ってしまいます。先走ってやらなくてもいいことをして失敗してしまいがちです。でも足もとを確実に固め、ゆっくりといいですから「生ききる」ことです。その打ち込む姿勢が「永遠の命」に帰結していきます。毎日、喜怒哀楽が人生です。じっとしていることしかできない時もありましょう。何もしたくない時もありましょう。無理して動かず「寒立ち」と決め込んで、そのままの気持ちでできること、一声のお念仏から一歩踏み出して下さい。一声が二声、十声。後はすべてを阿弥陀仏におまかせして問題の雪解けを待つことです。それがすがすがしい春のような人生を歩める最善の方法ではないでしょうか。  
                                    合 掌

                             尾張 善光寺 幸島正導


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