法然上人のお言葉

はじめに

時空を超えて

お念仏の元祖・法然上人は、末法劣悪の機根の者には、高嶺の花に過ぎなかった当時の日本仏教を百八十度転換され、誰もが救われる教えとして念仏の法門を開かれました。法然上人がご往生なされてより八百年が経ち、人は代わり世は移るとも、今法然上人が存しませば、必ずや「智者のふるまいをせずして、ただ一向に念仏すべし」と申されるでありましょう。

今では直接、法然上人からご説法を聞くことは出来ませんが、幸いにも法然上人がご生前にお残し下さったお言葉や、お便りが残っております。その一つが『元祖大師御法語』(前・後編)であります。これには、法然上人のお念仏信仰のみ教えがあますところなく述べられており、その万人救済の精神は万民の宝と申せましょう。

この度、総本山知恩院布教師会では、法然上人八百年大遠忌を記念して、祖師報恩のため、法然上人のみ教えを、いつでも、どこでも、誰でもが、正しく受け取って頂くようにとの願いで、『法然上人のお言葉―元祖大師御法語―』を上程致します。

本書は、浄土宗諸大徳のみならず、法然上人のみ心、お念仏のみ教えに接することを望む方々のご愛読を推奨するものであります。尚、本書を出版するにあたり、多大なご協力を頂いた、知恩院浄土宗学研究所の先生方に、熱い敬意と甚深の謝意を申し上げます。

八百年の時空を超えて、身近に法然上人のお言葉を頂戴して頂き、お念仏を喜び、お念仏をお称え頂く糧となりますことを祈念致します。

合 掌

平成二十二年四月二十五日
総本山知恩院布教師会会長  鈴 木 超 淳

※発行当時の文章をそのまま掲載しています。

凡例

  • 底本を『平成新版元祖大師御法語』(総本山知恩院)とし、漢字を増減させて読み易い本文を心がけました。
  • 各章の題名の下に概要と出典を示し、上に本文、下に現代語訳を掲げ、章末には注を付しました。
  • 注は、題名(*印を付す)および説明を要する語(注番号を付す)について施し、現代語訳で解ると思われるものには施しませんでした。また出典は『浄土宗全書』(『浄全』と略)および『大正新脩大蔵経』(『大正蔵』と略)によって示しました。
  • 現代語訳中、適宜〔 〕の中には本文に無い語を補い、( )には説明の語を挿入しました。
  • 巻末に索引を付して、利用の便を図りました。
  • 同じく巻末に『昭和新修法然上人全集』(石井教道編、平楽寺書店)の対応箇所を頁・行(マイナス記号は後ろからの行数を示す)によって、また、『法然上人のご法語』①消息編、②法語類編、③対話編(浄土宗総合研究所編訳、浄土宗)の対応箇所を巻号(①②③)および法語番号によって示す表を掲載しました。
  • 林隆碩『元祖大師御法語講話』(総本山知恩院、昭和四四年/総本山知恩院布教師会、昭和六十年再刊)、早田哲雄『勅修法然上人御伝全講』(全十冊、浄土宗西念寺、昭和四〇︱四七年)、塚本善隆編『日本の名著5法然』(中央公論社、昭和四六年)、石田瑞麿『例文仏教語大辞典』(小学館、平成九年)等を参照して多大の益を得ました。
  • 各法語の文脈や背景については直前の凡例に示した資料等によって補って頂くとありがたく存じます。