御法語
昔の太子は、万里の波を凌ぎて龍王の如意宝珠を得給えり。
今の我らは二河の水火を分けて弥陀本願の宝珠を得たり。
彼は龍神の悔いしがために奪われ、此れは異学異見のために奪わる。
彼は貝の殻をもて大海を汲みしかば、六欲・四禅の諸天、来りて同じく汲みき。
此れは信の手をもて疑謗の難を汲まば、六方恒沙の諸仏、来りて与し給うべし。
現代語訳
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今の我らは二河の水火を分けて弥陀本願の宝珠を得たり。
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今の私たちは〔貪りと憎しみという〕水火の二河に分け入り、阿弥陀仏の本願という宝玉を得たのです。
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彼は貝の殻をもて大海を汲みしかば、六欲・四禅の諸天、来りて同じく汲みき。
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太子が貝殻で大海の水を汲み干そうとしたところ、六欲、四禅の神々が来て、ともに水を汲み出しました。
※六欲・四禅の諸天=欲界に住む六種の天(四大王衆天・忉利天・夜摩天・兜率天・楽変化天・他化自在天)と、色界(四禅天)に住む多くの諸天。
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此れは信の手をもて疑謗の難を汲まば、六方恒沙の諸仏、来りて与し給うべし。
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私たちが信心の手で〔他宗の人の〕疑いや謗りという困難を汲み出すならば、六方の、ガンジス河の砂の数ほどの諸仏が来て、味方して下さるでしょう。