800年大遠忌
平成23年春、天皇陛下より新たに「法爾(ほうに)大師」の徽号が加諡され、10月2日からは、元祖法然上人八百年大遠忌法要が奉修されました。東日本大震災発生をうけ、当初予定していた日程を半年延期しての奉修でした。
たとえ時期は遅れても、被災地の人々と共にお念仏を称えられるならばこれに勝ることはない、法然上人のお念仏のみ教えをしっかりと次代へ繋ぎ、皆の心の中に一層確立させたい、と決意しての大遠忌法要でした。
800年大遠忌法要は、法要期間を3つに分け、それぞれ特色のある法要儀式を執り行いました。

古式法要
勢至堂で営まれた本廟開白(献花) 拝殿に参拝する本廟法要の導師
10月2日~10月9日の期間は、御影堂と御廟の2箇所で古式法要を厳修しました。
古式法要とは、1711年(宝永8年)の500年遠忌法要から知恩院に受け継がれてきた伝統的な法要です。古式法要では代々、お経に節を付けて音楽的に唱える「声明」(しょうみょう)中心におつとめをしてきました。800年大遠忌法要では、午前の日中法要では「唄」と「梵音」の二つの曲が、午後の逮夜法要では「散華」と「錫杖」の二つの曲が奏上され、知恩院山内は法然上人ご自身がお称えされたであろう優雅で格調高い「声明」に満たされました。
御影堂での古式法要は、三導師により勤められました (10月3日日中法要)
また、10月6日には中日庭儀式(ちゅうにち・ていぎしき)が行われ、総本山知恩院門跡伊藤唯眞猊下ほか約1500人の荘厳な行列が大遠忌法要に彩りを添えました。庭儀式は庭儀(にわのぎ)とも呼ばれ、大きな法要が勤められる際に屋外を練り歩き、法要の奉修を近隣に知らせるための儀式です。
緋色の衣を着た伊藤唯眞門跡猊下をはじめ、日中法要隋喜寺院や楽人、おてつぎ運動推進協議会会員、吉水講詠唱隊、華やかな衣装をまとった200人の稚児など、約1500人が集会堂から御影堂までの約1.2キロをおよそ1時間かけて練り歩きました。荘厳な行列に沿道では手を合わせてお念仏を称える方もいらっしゃいました。

庭儀式-女人坂を進まれる伊藤唯眞猊下
東日本大震災物故者追悼法要
東日本大震災7カ月となる10月11日には、伊藤唯眞門跡猊下御導師のもと東日本大震災物故者追悼法要が厳修されました。御影堂で営まれた追悼法要では、被災された岩手、宮城、福島3県の檀信徒と僧侶をお招きして今回の震災で亡くなられた方々の回向がなされ、行方不明者の発見と、被災地・被災された方々の一日も早い復旧を祈念しました。
また震災発生時刻の午後2時46分に合わせて、被災した檀信徒や僧侶ともどもに知恩院の大鐘を撞きました。

念仏会法要
10月13日から16日までは、「僧俗一体」の理念のもと、知恩院関連団体による法要や、檀信徒・参詣者の皆さまと僧侶が共々におつとめするお念仏を中心とした法要「念仏会法要」などが行われました。期間中は、連日、宮殿(くうでん)から法然上人の御尊像にお出ましいただき、僧侶や参列者がともに木魚を打ちならし、お念仏を高らかにお称えしました。
御尊像は内陣中央に安置され、今までにない近さで御尊像を拝した人々は、この法要に参列できたことを喜んでいらっしゃいました。


浄宗会法要
10月17日から6日間は、浄宗会(じょうしゅうかい)法要を勤めさせていただきました。期間中は毎日、11の各総大本山が代わる代わる知恩院に登嶺され、御影堂において、それぞれ伝承されている流儀や作法で法要をお勤めいただきました。
浄宗会各総大本山が知恩院で法要を奉修されることは、過去にはなかったことです。期間中は秋晴れの中、全国各地から約10,000人の方々が参拝され、広縁に立ってお参りする参拝者の姿も見られました。
連日の尊い法要に御影堂は迫力と厳粛さに包まれました。
17日 日中法要
大本山知恩寺法主服部法丸台下が導師をお勤めくださいました。 百萬遍念佛大念珠繰り
17日 逮夜法要
練り供養 西山浄土宗総本山光明寺第八十四世憲空文有猊下が導師をお勤めくださいました。
18日 日中法要
4人の御導師によりお勤めくださいました。 浄土宗大本山金戒光明寺法主高橋弘次台下
18日 逮夜法要
浄土宗西山深草派総本山誓願寺法主井ノ口泰淳猊下が導師をお勤めくださいました。
19日 日中法要
浄土宗大本山善導寺法主阿川文正台下が導師をお勤めくださいました。
19日 逮夜法要
浄土宗大本山光明寺法主宮林昭彦台下が導師をお勤めくださいました。
20日 日中法要
時宗総本山清浄光寺法主加藤円住猊下が導師をお勤めくださいました。 賦算化益
20日 逮夜法要
浄土宗大本山善光寺大本願鷹司誓玉台下が導師をお勤めくださいました。
21日 日中法要
浄土宗西山禅林寺派総本山永観堂禅林寺法主中西玄禮猊下が導師をお勤めくださいました。
21日 逮夜法要
庭儀式 浄土宗大本山増上寺法主八木季生台下が導師をお勤めくださいました。
22日 日中法要
浄土宗大本山清浄華院法主真野龍海台下が導師をお勤めくださいました。
最後に ~元祖法然上人850年大遠忌に向けて~
800年にわたる遠忌の歴史を振り返り、その報恩の軌跡をたどると、時の流れの中で法然上人への思いがどのように培われ深められてきたかを目の当たりにします。
平成23年に奉修された800年大遠忌法要では、全国から約5万人の僧侶・檀信徒が出勤・参拝。大遠忌法要期間4週間にわたって、連日境内中に法然上人へ思いを寄せるお念仏の声が、日々、高らかに響きわたっていました。多くの皆さまと仏縁を得、元祖法然上人との縁を得、慈しみの絆を結び合えたこと。檀信徒、参詣者の皆さま、僧侶が一体となって法然上人の御影の御前、上人が念仏のみ教えを説かれ、最後を迎えられたこの地で一緒にお念仏を称えられた慶びは、ただただ感激の至りでした。
これらすべてが祖師報恩の熱誠によるものであり、年々毎の大遠忌が祖山挙げての一大慶事となっているもの、皆さまのお力添いによるものと感謝申し上げます。
われわれは念仏信仰を深めつつお念仏の声をこれからも後々の年に継承し、報恩感謝への思いを弛ませることなく八百五十年大遠忌へと繋いでまいります。