昭和41年におてつぎ運動が発足してから本年で50周年。住職の引率のもと全国から檀信徒が登嶺してお念仏や清掃奉仕に励む「おてつぎ信行奉仕団」(以下、信行奉仕団)は、50年にわたってこの信仰運動の根幹をなしてきました。
信行奉仕団はこれまでどのような役割を果たし、今後どのように発展していくのか。指導員としてご尽力いただいている城平賢宏上人(京都教区天然寺)、平井隆祐上人(兵庫教区東光寺)、鷲尾純昂上人(奈良教区来迎寺)にお話をうかがいました。
(聞き手・おてつぎ運動本部課長 九鬼昌司)

京都教区天然寺住職
城平賢宏上人

奈良教区来迎寺住職
鷲尾純昂上人

兵庫教区東光寺住職
平井隆祐上人
九鬼昌司(以下、九鬼):お三方には毎年何回も指導員としてお越しいただいています。どのようなことをお感じになっておられますか。
城平賢宏(以下、城平):登嶺される檀信徒のなかには、やはり悩みや苦しみを抱えた方もいらっしゃいます。知恩院で一泊二日の時間を過ごすなかで、心が晴れ晴れとして来て、悩みや苦しみから「救われた」と感じて感謝してくださることがあります。信行奉仕団でご縁をいただいて以降、定期的にお手紙をくださる方もあります。そういう仏縁は嬉しいですね。
鷲尾純昂(以下、鷲尾):私が印象に残っているのは、ある信行奉仕団の団員さんの中で、一人のご婦人が私の所に来て、「和尚さん、恥ずかしい話ですが、わたし初めはあんまり興味なかったんです。ある時、主人に無理やり連れられて参加したんです。興味なかったけれども、来てみるとやっぱり心に感じるものがあって、今日もこうして主人とお参りさせていただいているんです。」こう言われたんです。私が、「そうですか!ご縁をくださったご主人はどちらに?」こう尋ねますと、ご婦人が手提げ鞄から一枚の写真を出して「主人、昨年亡くなりまして、今日は写真での参加です。主人の分まで頑張ってお参りしなきゃ!今度は私の息子を連れてお参りしますね!」こう笑顔でおっしゃいましたよ。ここに「おてつぎ」の素晴らしい流れが脈々と続いているという事を実感させられました。
平井隆祐(以下、平井):聞いていて背筋の伸びるような話ですね。指導員として携らせていただくようになって、自身のお念仏の信仰を育むうえでも大事な活動だと私も思うようになりました。しかし、まだ登嶺されたことのないお寺はたくさんありますし、どんな活動かご存じない方もいらっしゃるのが事実でしょう。一昨年、兵庫教区の青年僧侶一行が信行奉仕団に参加したのは、大きな意味があることだと思います。大阪教区の青年僧侶も登嶺したとうかがっています。お寺の住職や副住職が、檀信徒の信仰を育むうえで信行奉仕団に連れて行くのがいいと理解してくださったら、この活動はますます広がりを見せていくはずです。
鷲尾:実際、住職がしっかりされているお寺は、檀信徒もしっかりされているように感じます。教化とはそういうことなんでしょうね。
九鬼:信行奉仕団の登嶺者数は近年多い年で約9千人でした。この数年は約5千人ぐらいで推移しています。その一方で、知恩院の境内は朱印ブームなどもあって毎日多くの人々で賑わっています。今年6月にはタイの僧侶が信行奉仕団に参加されました。
鷲尾:今年の春のライトアップでは、初めて「聞いてみよう!お坊さんの話」を実施し、知恩院の職員が阿弥陀堂でお話をしたところ、毎日満堂になるほど好評だったと聞いています。「ミッドナイト念仏 in 御忌」も毎年大人気ですね。一般の方でも仏教に関心を持たれている方や、悩みのある方なども多いと思います。

信行奉仕団で法話をする城平賢宏上人

座談会風景
城平:阿弥陀堂で念仏や礼拝しているときに、ふらっと通りがかった観光客の方が一緒に交じることに対して、抵抗感を持たれる檀信徒さんもあるかもしれません。しかし、これまでに大きなトラブルになったことはないですし、大切にするべきなのはお念仏の縁が広がっていくことだと思います。お寺の敷居は高いと言われるなか、知恩院に関心を持ってくださっている方がたくさんいらっしゃるのですから、なるべく敷居を低く接していたいですね。
平井:外国人の方に一緒に礼拝をしていただいたこともあります。こんなに心を一つにして礼拝を行うことはアメージングだといわれたことがあります。日本が誇る信仰文化に触れていただいて、それを持ち帰ってもらうという国際交流は意味のあることですし、海外の方に賞賛していただくことによって、私たちも仏教に出会えた有り難さをより一層再確認することができます。
九鬼:本日はどうもありがとうございました。これからも指導員の先生方とともに、皆さまの知恩院へのご登嶺をお待ち申し上げます。