法然上人のお言葉― 元祖大師御法語 ―

前篇
第十二章

正雑二行しょうぞうにぎょう

速やかに苦しみの境涯を超えるには、浄土門に入って念仏に専念せよ。阿弥陀仏の本願によって必ず往生できる。

(勅伝第十八巻)

御法語

それすみやかに生死しょうじはなれんとおもわば、二種にしゅ勝法しょうぼううちに、しばら聖道門しょうどうもんさしおきて、えらびて浄土門じょうどもんれ。

浄土門じょうどもんらんとおもわば、正雑しょうぞう二行にぎょううちに、しばらくもろもろの雑行ぞうぎょうなげすてて、えらびて正行しょうぎょうすべし。

正行しょうぎょうしゅせんとおもわば、正助二業しょうじょにごううちに、なお助業じょごうかたわらにして、えらびて正定しょうじょうもはらにすべし。正定しょうじょうごうというは、すなわれ、ほとけ御名みなしょうするなり。しょうすれば、かならまるることをほとけ本願ほんがんるがゆえに。

現代語訳

それすみやかに生死しょうじはなれんとおもわば、二種にしゅ勝法しょうぼううちに、しばら聖道門しょうどうもんさしおきて、えらびて浄土門じょうどもんれ。

さて、速やかに迷いの境涯を離れたいと願うならば、二種の勝れた教えの中で、まずは聖道門をさしおいて、選んで浄土門に入りなさい。

※且く=他の可能性に含みをもたせる表現。とりあえず。ともあれ。まずは。

浄土門じょうどもんらんとおもわば、正雑しょうぞう二行にぎょううちに、しばらくもろもろの雑行ぞうぎょうなげすてて、えらびて正行しょうぎょうすべし。

浄土門に入ろうと願うならば、正行と雑行の二行の中では、まずはもろもろの雑行をなげうって、選んで正行を依りどころとしなさい。

正行しょうぎょうしゅせんとおもわば、正助二業しょうじょにごううちに、なお助業じょごうかたわらにして、えらびて正定しょうじょうもはらにすべし。正定しょうじょうごうというは、すなわれ、ほとけ御名みなしょうするなり。しょうすれば、かならまるることをほとけ本願ほんがんるがゆえに。

正行を修めたいと思うならば、正業と助業との二業の中では、やはり助業を脇に置き、選んでひたすら正定業に励みなさい。正定業というのは、つまり阿弥陀仏の名号を称えることです。名号を称えれば、必ず〔極楽浄土に〕生まれることができます。阿弥陀仏の本願によるからです。