年頭はお念仏で

総本山知恩院門跡 伊藤唯眞

 阿弥陀仏の慈光のもと、爽やかな新春をお迎えになられましたこと、心よりお慶び申し上げます。
 古くから寺々では年頭に修正会がつとまり、身を清らかにした人びとが灯を点じて、餅を供え、風雨順時、五穀豊熟、家内安全を祈ってきました。
 では法然上人の年頭はどうでしたでしょうか。上人が年初に別時念仏をつとめられたことが伝記に見えています。建久九年(一一九八)生年六十六の正月七日の別時念仏をお勤めになった時、「はじめにはまづ明相あらはれ、次に水想影現し、後に瑠璃の地、少しき現前す。同二月に宝地、宝池、宝楼を見たまふ。それよりのち、連々に勝相あり(略)くはしき旨、御自筆の三昧発得の記に見えたり」(『勅伝』七巻)とあります。口称念仏による三昧発得を成就されたのです。この年は正月一日より二月七日まで三十七日間に毎日七万遍の念仏を続けられ、種々の瑞相を御覧になりました。
 また元久二年(一二〇五)は、正月一日から霊山寺で三七日の別時念仏を勤められ、この時は灯火なくして光りがあり、第五夜に勢至菩薩が上人の列に並んで行道されたのを弟子の信空上人が拝したといいます(『勅伝』八巻第四段)。
 このように、法然上人の新年は、元日から別時念仏で始まったのであります。私たちもお念仏で新年を迎え、阿弥陀仏の本願を深く信じ、平生のお念仏を相続し、充実した日々を送りたいと思うのであります。

合掌