今年1月から始まっている国宝・御影堂の平成大修理作業は1つの節目を迎えました。
7月20日、ついに御影堂の二分の一が素屋根に覆われたのです。
素屋根は屋根瓦などを取り外した状態の御影堂を雨風から保護し、作業の足場とするために設置されるものです。修理が完了した時には取り払ってしまう仮の屋根ですが、御影堂は別名、大殿(だいでん)と呼ばれるほど雄大なお堂。このため、素屋根を作るだけでも1年近くを費やす大がかりな作業になります。
大修理前の御影堂
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7月19日撮影
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7月24日 半分が覆われました
7月19日と7月24日の写真は、ちょっと見では変わらないように感じますが、実は大きな違いがあります。
7月19日の御影堂
7月24日の御影堂
御影堂の瓦屋根の中央に4枚の瓦が置かれているのが分かりますか?
7月24日にはこの4枚の瓦が素屋根の中に隠れたのです。
この瓦は「葺き残しの瓦」といい、御影堂が竣工した時にあえて残されたものだといわれています。
「満つれば欠くる世の習い」―満月になった月がやがて欠けていくように、完成に至ったものは必ず衰退に転じてしまう ― という故事にちなみ、わざと完成の一歩手前の状態で止めることによって、知恩院が今後益々発展することを願ったのだそうです。
こういった工夫は建造関係ではよく行われていて、例えば、日光東照宮の陽明門では柱12本の内1本だけを逆さにしているそうです。古来、完璧なものには魔が潜むとされ、こうして未完成な部分を残すことで難を逃れようとしたのです。