トピックスTopics

2018年12月

お坊さんに会いに行こう!
秋のライトアップ2018

 11月2日から12月2日まで行われた秋のライトアップ。
オープニング3日間の「おてつぎフェス」、法話と木魚念仏
を行う「聞いてみよう!お坊さんのはなし」の他に今年は
SNSを活用したお楽しみ企画も開催した。

若い人が仏教に触れる機会を

 知恩院のライトアップは平成12年秋から始まり、今年で19年目を迎えた。当時は珍しかった夜間拝観も今では紅葉や桜の時期に多くの寺社が開催し、人気の観光スポットとなっている。夜の幻想的な風景を楽しむのが通常のライトアップであるが、知恩院では平成28年春から「聞いてみよう!お坊さんのはなし」を始め、来場者の大半を占める若い人たちに仏教に触れてもらう機会を作っている。「くらしの中の仏教」「しあわせに生きる秘訣」など週替わりのテーマに沿った15分程の法話を聞いた後、木魚念仏体験ができる。
 観光寺院ではなく、信仰のための開かれたお寺であることを生かしたこの企画。年々定着しつつあり、今ではお話を聞くために訪れるリピーターも増えた。「日常から離れ、自分と向き合う時間が過ごせる」と好評で、休日は満堂が続く。「一般の方に分かりやすく話すのは難しいが、熱いまなざしで聞いてくれる参詣者の姿勢に学べることは多い」と僧侶は伝える喜びを感じている。感動や気づきを一つでも持ち帰ってもらい、手を合わせるなどの信仰心が普段の生活の支えになればと訴えかけている。
 今年で3回目となるオープニングイベントの「おてつぎフェス」は、三門下でのライブ、宝佛殿での紙芝居やマジックなど盛りだくさんの内容で行われた。

山添真寛上人が紙芝居を上演

 知恩院奉職者のバンド経験者を集めて、ライトアップ限定で結成された「ぽくぽくすまいる」。今回で解散となる最後の演奏は、途中でハーモニカも加わり、会場が歓喜に包まれた。アンコールが起こり、復帰を望む声が早くも聞かれた。

2日間にわたり行われた「ぽくぽくすまいる」のバンド演奏

 おてつぎフェス期間中に先着でお配りしたお袈裟の柄のラバーバンドは、株式会社フェリシモ「フェリシモおてらぶ」の協力を得て作成。裏側にQRコードを埋め込み、限定ページを閲覧できる仕組みを付け、ライトアップの後も知恩院との繋がりを持ってもらえるように、新年のお参りツアーのご案内も含ませた。

入口を親しみやすく

 お寺の存在をもっと身近に感じてもらえればと、近年はライトアップのポスター、チラシにお坊さんの写真を載せ、「お坊さんに会いに行こう!」というキャッチフレーズを掲げている。デザインは、知恩院側で大まかな方向性を決め、写真などの素材を集め、業者や個人デザイナーに依頼。お寺の荘厳で静かなイメージを崩しすぎないように見定め、毎回試行錯誤しながら約3ヵ月かけて完成させる。一目で「知恩院に行きたい」と思ってもらえるような賑やかな雰囲気を出した今年のデザインで、特に注目を集めたのは躍動感ある5人のお坊さん。堅い印象のお坊さんが笑顔でジャンプするというギャップに驚く人が続出。10月初旬から知恩院のホームページ上でライトアップを告知し、街中にポスターが掲示されると、SNS 交流サイト「ツイッター」で「知恩院が攻めている」「何があった?」などの声が相次ぎ、話題となった。
 昨年から制作しているライトアップPR 動画(プロモーションムービー)も知恩院を知ってもらうための入口の一つとして始めた。今年はお坊さんがダンスミュージックとともに夜の三門から現れる「木魚EDM 編」、インタビューを交えてお坊さんの趣味や知恩院での日常を紹介する「ロッキン仏道編」「フレッシュ念仏編」の3本をYouTube「知恩院公式チャンネル」で公開している。親しみやすいお坊さんのイメージを持ってもらうことも狙いで、今回はネーミングにもこだわった。テレビやネットニュースで取り上げられたこともあり、第一弾「木魚EDM 編」の再生回数は11月中旬で4万回近くとなる反響があった。

SNS での情報発信

 知恩院では現在フェイスブック、インスタグラム、ツイッターを開設し、それぞれの特徴に合わせて行事の告知や報告をしている。SNS は、駅貼りなどのポスターやチラシよりも広範囲に拡散でき、若い人に向けて情報が届きやすい。様々な反応や生の声が聞けることも有難い。
 今年から照明が一新され、三門の柱に浮かび上がった「南無阿弥陀仏」の名号や青色で水の流れを表現した枯山水など、様々な光の演出が見られた。境内にはポスターに掲載したお坊さんの等身大パネルも配置。ライトアップ中はインスタグラムでフォトコンテストを実施し、個性豊かな写真がたくさん寄せられた。入賞者は12月中旬にホームページ上で発表する。

光で映し出された「南無阿弥陀仏」の名号

青色の光に照らし出された友禅苑

 ライトアップの企画にはすべて「多くの方にお参りいただきたい」という思いが根本にある。800年以上の歴史や伝統を重んじ、法然上人のみ教えを伝承するため、こちらから情報発信していくことが大事である。幅広い年代の方が来られる夜間拝観では、形式にとらわれない現代に合わせた新しい挑戦が今後さらに必要となるだろう。
 
 2年後には、落慶法要を終え、9年ぶりに御影堂がライトアップされる。これまで築いてきた繋がりが途切れないように、信仰心を養える機会を継続的に設けたい。知恩院と縁を結んでいただいた多くの方々が再び御影堂に集い、お念仏の声が響き渡ることを願う。