華頂特集記事Kacho

2019年2月

暮らしの中に
お念仏の息吹を

朝目覚めると、まずはお仏壇に手を合わせ、
夜には手を合わせてから眠りにつく。
本夛さんはそんな当たり前の日々を今日も送っていく。

 知恩院には、毎朝の晨朝法要に参拝する「朝参会」という集まりがある。大正13年に「華頂朝まゐり講」として結成され、法然上人750年遠忌(昭和36年)を記念して「朝参会」と改名された。法要への参加の他にも、輪番法話の拝聴をはじめ、毎月14日には例会の別時会を修して念仏信仰を深めている。

 昨年まで会長を務めていた本夛孝久さん(89)は、朝参会に入会して20年。入院した時を除き、毎日欠かさず晨朝法要へ参列してきた。今回は長年知恩院へ通う本夛さんにお話を伺った。

長年、朝参会の会長を務めた本夛孝久さん

朝参会との出会い

 本夛さんがお経の勉強を始めたのは今から30年前にさかのぼる。亡くした母を供養し、御先祖様と仲良くしてもらいたいという一心で、お経の勉強を続けていた。初めて知恩院を訪れたのは70歳の時。嘱託を辞め自由な時間ができたため、法然上人の命日である25日に参拝してみようと考えたそうだ。「真っ暗な時分から家を出て、雪が降る中を歩いて行きました。そしたらね、行くのが早すぎたみたいで、まだ誰もいなかったんですよ」と当時の思い出を語る。
 そんな経験の後、再び知恩院を訪れたのは夏の早朝に開かれる暁天講座だ。地元出身であるラグビーの大八木選手が講師だったため、応援する気持ちで参加した。そこで暁天講座が5日間開かれることを知り、連日参加していたところ、当時の朝参会の会長に「お参り会がありますのであなたも参加しませんか」と誘われたそうだ。「誘っていただいた次の日から通い始めました。最初は歩いて行きましたね。3キロほどですから。空の月を眺めながら歩くんですよ」しばらくして車を購入してからは他の朝参会のメンバーを誘いながら通い、免許を返納してからも地下鉄やタクシーを利用して通い続けた。
 言葉で並べるのは簡単だが、実際に毎日となるとなかなかできることではない。ところが本夛さんは「毎日だからできるんですよ」と言う。「続けていたから行かないとしょうがないなって。朝に目が覚めるから、今日も行きましょうかとなります。4時に起きて5時に家を出る。それがもう習慣となっていました」

法要後の日課

 晨朝法要が終わると、知恩院布教師による輪番法話が続けて行われる。本夛さんは法話拝聴の際、持参したカメラで布教師の姿を写真に収めるようにしていた。「布教師さんは1人でいらっしゃるので、知恩院で話す姿を写真に残したいと思ってもできないわけです。ですので、私が写真を撮ってお渡ししていました」

 撮影を始めた時はフィルムカメラを使っていたので、フィルムを使い切るまで現像に出すことができない。そのため、あらかじめ布教師の住所を聞いておき、後から写真を郵送していたそうだ。また、写真だけでは寂しいからと、法話のネタになるよう新聞の切り抜きも同封していたという。「自坊の機関誌で写真を使いましたと連絡をいただいたこともありましたね。写真はずっと続けて撮っていましたが、ここ1、2年は歩くのが大変で知恩院にお参りできず、途切れてしまいました。おかげさまで小遣いが溜まっていく一方です」と本夛さんは笑う。

お念仏の日々を共に

 お話を伺う中でふと仏壇前に目を移すと、四誓偈や真身観文、阿弥陀経と書かれた冊子が置かれていた。「これは自分で書き写した経本です。表紙は何回か新しくしましたが中身はそのままで、20年間ずっと使っています。最期はお棺の中に入れてくれと頼んであります」中身を拝見すると、筆で丁寧に書かれたお経が整然と並んでいた。ページの端は手垢で真っ黒になっており、毎日使われてきた歴史を物語っている。知恩院への参拝にも、この経本を忘れず持って行くそうだ。「お経はもう頭の中に入っているんですけどね。如是我聞。一時仏在。舎衛国・・・。でも似ている部分で間違うといけないので経本もめくりながら称えるようにしています」

お経は全て手書きで、20年間使い続けている。

 知恩院から帰宅すると、まず仏壇に仏飯を供え、朝食の前に必ず朝のお勤めをする。「普段は四誓偈で、御先祖様の命日には阿弥陀経をあげます。御法語はその日の章を読んでいます。朝のお勤めに前編、夜のお勤めでは後編ですね」法然上人御法語は前編・後編とあり、それぞれに31の章で構成される。知恩院の法要では、3日であれば3章というように、その日と同じ章を拝読しており、本夛さんも同じようにしている。知恩院へ行けなくなってからも、仏壇でのお勤めは続けている。
 「朝晩読ませてもらって、おかげで長生きさせてもらってるのかなぁと思います。がんで手術したときも後遺症はなく、下血してたくさん輸血をしたときも副作用がでませんでした。いつなんどきお迎えが来てもいいと思っているんですけど、きてくれはらへんのです。もしかしたら、お参りさせてもらってるから、来ないのかもしれないですね」

手作りの経本。御法語は31冊に分け、日ごとに使い分ける。

 本夛さんにとって毎日お勤めをすることは日常であり、生活の中に根付いたものとなっている。その日々をこれからも営み、来春執り行う御影堂落慶法要に是非とも参列いただきたいと願っています。

 

(取材・文 關真章)

朝参会入会のご案内

 朝参会では晨朝法要への参拝のほか、毎月14日には別時会を修し、念仏を称え法話を拝聴します。どなたでもご入会いただけますので、ご希望の方はおてつぎ運動本部までお問い合わせください。

TEL:075-541-5142