華頂特集記事Kacho

2019年4月

仏さまに見守られながら

 サラナ親子教室は、マタニティおよび0歳児から2歳児とその保護者を対象とし、「お母さんの安らぎ」「子どもたちの幸せ」「お寺の活性化」の3つの柱を掲げている。お寺での子育て支援は年々広まり、全国の教室は現在、19校ある。20周年を迎えた今回は、関東地域でのさらなる事業の発展を願い、インストラクター養成講座の全3課程を東京で開催した。

広がる安らぎの輪

 養成講座では、講義や実技を通して教室開校や運営のノウハウを学ぶことができ、全て修了すると各教室で直接指導にあたるインストラクターの資格を取得できる。6月の第1課程(1泊2日)、11月の第2課程(2泊3日)に続き、2月8日からの第3課程(2泊3日)は、大本山増上寺を会場とし、お歌や手遊びの練習をしたり、パネルシアターを実演したり、終始賑やかな雰囲気で行われた。模擬教室の実践では、受講者全員が30分ほど話し合い、実際に教室を進行。テーマ活動のキャンドルや指人形作りでは、工夫を凝らしたものが披露され、知恩院のスタッフが「こんな使い方もできるよ」とアドバイスしながら、次々と新しいアイデアが生まれていた。
 養成講座2日目は、開校21年目となる雲龍寺教室(栃木県鹿沼市)の今井映子さんによる活動報告があった。「ほとんどが檀家でない若い世代ですが、教室に通っているうちに、お寺の環境に慣れ、自然と手を合わせられるようになります。お寺の行事にも親子で参加してもらい、地域の方々と交流できる機会をたくさん作っています」と、普段心掛けていることやお寺だからこそできる活動などを伝えた。サラナ親子教室を始めたことでお寺が活気づいたと強く感じているという。

 閉講式の挨拶でおてつぎ運動本部の堀田定俊副本部長は「『三つ子の魂百まで』と言うように、3歳まではお母さんの愛情に包まれて安心できる環境で育つことが非常に重要とされています。女性の社会進出を求められる時代ですが、将来に大きな影響を与える幼少期の子育ての大切さを祈りのあるお寺で伝えていってほしいです」と述べた。
 五島列島から来た中村奈津子さん(長崎教区阿彌陀寺)は、3人目の出産を乗り越え、1年8ヵ月かけて講座を修了した。「子どもの少ない地域ですが、子育て支援に興味があり、お寺で自分が役に立てることをしたいと思いました。今回いただいたご縁を今度は自分が広めていきたいです」と意欲的に話した。また、埼玉県や千葉県からの受講者も今後の開校に向け準備を進めたいという。開校後には、パワーアップ講座(開校寺院連絡会)で他の教室のインストラクターと情報交換できるサポート体制も整えている。

養成講座で指人形を作る受講生とスタッフ

変わらない憩いの場所

 昨年7月8日には、サラナ親子教室20周年記念法要を知恩院で執り行った。現役生や卒業生、その保護者など約100名が集まり、一期生の親子の姿もあった。法要後、みんなで体を動かしたり、知恩院のスタッフによる寸劇を鑑賞したり、昔の思い出に浸りながら、親子で楽しい時間を過ごした。

20周年記念法要の様子(2018年7月8日)

 サラナ親子教室は今から20年前、ソニー創業者の井深大氏が提唱された外郭団体EDA(幼児開発協会)の全面的な支援を受けて設立。第一回目の教室は、知恩院の旧和順会館の大広間で3人のインストラクターと僧侶が3組の親子を迎えて始まった。当時から知恩院教室を支えているインストラクターの福井富美子さんと橋本三千代さんはその日のことを懐かしみ、「教室の最初に仏さまの前で手を合わせ、法話を聞く流れは20年経った今も全く変わっていません。これからもお母さんの気持ちに寄り添い、親子で安らげる場にしていきたいです」と話す。知恩院教室では、核家族、共働き世帯が増えていることを配慮し、4年前から日曜日クラスと土曜日クラス(月1回)も始めた。日曜日クラスは、小学校3年生までの卒業生も参加でき、仕事の忙しさから解放されてリラックスするお父さんの姿も見られる。
 仏さまに見守られながら、お寺でゆったりと親子の絆や信頼を深め合えるサラナ親子教室。背景に仏教の教えがあることで「お念仏や合掌をすると心が落ち着く」という声が多い。サラナ親子教室で縁を結んだお寺は、巣立った親子がいつでも戻って来ることのできる心の拠り所となっている。檀家離れや寺院消滅が危ぶまれ、社会全体では少子化が問題視され、幼児虐待や育児放棄が頻発している現代こそ、お寺が中心となり、地域社会と連携して子育てを推進していくことが必要なのではないでしょうか。

和順会館の大広間でのびのびと体を動かす子どもたち(知恩院教室)

(取材・文 国松真理)