華頂特集記事Kacho

2020年1月

みんなでつくろう!声明Live
~歌って感じる極楽浄土~

 知恩院ライトアップが始まって20年。平成28年からは「聞いてみよう!お坊さんのはなし」をはじめ、ライトアップ中に仏教に触れていただける機会を増やしてきました。今回は初の試みとして「みんなでつくろう!声明Live~歌って感じる極楽浄土~」と題した声明公演を三門下で開催しました。公演にご協力いただいた総本山式衆会の小林常晋上人(大阪教区正縁寺)と橋本知之上人(尾張教区西蓮寺)にお話を伺いました。

小林上人(左)と橋本上人(右)

――普段は法要に携わっていただいている式衆会の皆さんですが、今回の公演にあたってどのような考えがありましたか。

小林:実は以前にも京都の南座や東京の国立劇場などで声明の公演はしていて、観客に向けて唱えるのが全く初めてというわけではないんですよ。そういうこともあって、お話をいただいた時にはすぐに協力しようと思いました。

橋本:初めて観客に向いてやったときはものすごく違和感がありましたけどね。我々僧侶が仏像に向いて、檀家さんが背中側に座っておられるのはあたりまえのことでしたので。でも縁あっていろんなところへ行かせてもらう中で、観客へ向いてするのも「布教」のひとつの形だと考えるようになり、違和感はなくなりました。今回お話をいただいた時も、ライトアップを見に来た人に一瞬でも法然上人やお念仏に触れてもらうためと考えれば問題ないと思いました。

小林:公演では最初に笏念仏を聞いてもらい、式衆会の若手がMCを務めて、声明とは漢字ばかりのお経に節をつけて覚えやすくしたものですよ、CMソングが頭に残りやすいのと同じですよ、とできるだけ分かりやすく説明をしました。そして我々に続いて一緒に声明を唱えてみましょうと。これは初めての試みで不安でしたが、いざその時になると大きな声が揃ってこちらへ返ってきて感動しましたね。声明は西洋音楽と違って指揮者がおらず、ひとつのものをみんなで間を感じながら唱えます。みなさんの真剣に体験しようという気持ちがあったからこそ、場の雰囲気を感じ取って揃って唱えることができたのだと思います。

当日配布した資料。甲念仏を共に唱えた。

――まさしくタイトルを体現したような公演でした。このような公演ができたのも、普段は御忌(ぎょき)注1や兼実忌(かねざねき)注2などで伝統的な法要を勤めていただいているうえで成り立っていると感じました。

橋本:今回のような場があるのはよいことだと思います。古い時代だと、観客に向かって唱えるとは何事だという考えが強かったですからね。私の話をすると、意識が変わったのは20年くらい前に海外へいかせてもらった時です。公演する場所が大衆酒場の中で、思わず「これはちょっと問題でしょう」ともらしたんですよ。そうしたら一緒にいた南上人(現知恩院法務執事)に「ここでお念仏も何も知らん人に、聞いてもらえるだけでもありがたいやないか」と言われたのが目から鱗だったんです。ライトアップも言ってしまえばお寺に興味なく紅葉だけ見に来る人もいるだろうけど、そういう人にお念仏を聞いてもらえるだけでもありがたい。

小林:布教はその時代に合わせて変化していくものです。明治なら明治のやり方、令和ならギターを使うこともあるでしょう。でもその一方で古式は古式としてしっかりと残していく。4月にはついに落慶を迎える御影堂で御忌を勤めますが、伝統を受け継ぎ、またこれまで伝えてくれた人の心を感じながらしっかりと勤めたいと思います。

ライトアップ中に勤められた兼実忌

注1…法然上人の忌日法要
注2… 法然上人に深く帰依された九条兼実公の追悼法要