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2020年12月号

世界とつながる別時念佛会

 コロナウイルス感染症の影響で多くの行事が中止や見送りとなるなか、全国浄土宗青年会では、コロナ禍だからこそできることを進めようと、オンラインの別時念佛会を企画した。

新しい別時念佛会

 全国浄土宗青年会(全浄青)は18歳から43歳までの浄土宗僧侶で構成される団体で、国内47教区の会員がともに研鑽し、社会教化につくすことを目的としている。令和2年10月22日には、知恩院で御影堂落慶記念法要、そして発足50周年記念大会を盛大に行う予定だった。しかしコロナウイルス感染症感染拡大で、一堂に集まることが難しくなり、開催は見送りとなった。

 このような状況で新たに提案されたのが「Zoom」を利用したオンラインでの別時念佛会だ。「Zoom」はパソコンやスマートフォンを通して複数人でのビデオ通話が可能となる会議システムで、コロナ禍において注目が集まり、利用者が増加している。全浄青でも早くから会議で導入しており、8月にはオンラインの研修会も実施した。

 今回提案されたオンライン別時念佛会は、知恩院御影堂を始めとする映像を「Zoom」で共有しながら、全国各地の会員が同時に別時念佛を行うというもの。また、オンラインの利点を生かして、同日来日し別時会をつとめる予定であった海外開教区の寺院と檀信徒にも参加してもらい、普段拝することができないお堂を目にしながら、ともにお念佛を称える機会となるようにした。

初の試みに向けて

 「お念佛で世界とつながる感覚を全浄青会員に体験してもらい、海外の檀信徒様にも、日本に法の仲間がいるという実感を持っていただきたい」という全浄青理事長 松野瑞光上人の思いのもと、事前準備が入念に進められた。

 配信は松野上人が住職を務める法源寺が中心となる。念佛の声と木魚の音がバランスよく聞こえるよう、細かくマイクの位置や音量を調整。配信画面の切り替えがスムーズに行えるか操作をチェック。また、通信環境に問題がないか確かめるため、本番と同じ曜日・時間帯にあわせて配信テストを何度も実施した。海外開教区とも段取りやリハーサルを重ね、本番で通信が不安定になる可能性を考慮して、緊急時に挿入できる映像も事前に用意した。

法源寺の配信の様子

離れた地でともに念佛を

 開催日の10月22日。全浄青代表の3名が知恩院に来山し、御影堂で配信準備が進められた。オンライン別時念佛会への参加者は約200人。そのうち海外開教区からは、ハワイ開教区4ヶ寺、北米開教区1ヶ寺、南米開教区4ヶ寺が参加した。

 準備が整い開会が宣言されると、まずは海外開教区の紹介が行われた。ハワイ開教区総監の石川広宣上人は「御影堂落慶法要で知恩院へ参拝し、ともにお念佛を称えることを楽しみにしていたが、ここまでコロナが長期化するとは思っていなかった。このような機会を用意していただけてありがたい」と話し、続けて現在の活動状況を報告した。そして北米開教区と南米開教区も報告を終えると、全員で一枚起請文を拝読し、別時念佛会が始まった。

海外開教区より 南米浄土宗別院日伯寺

 最初に知恩院の堂内が映し出されると、参加者一同は配信を通して御影堂の法然上人を拝し、お念佛を称えた。しばらくすると海外開教区から参加した9ヶ寺それぞれの画面へと切り替えられていき、ご本尊を順に拝しながら別時念佛会は続く。最後には再び知恩院の堂内が映され、約45分間に及ぶ別時念佛会が終了した。

知恩院御影堂内陣

 今回の試みを終えて松野上人は「法然上人のお念佛のみ教えが日本全土、さらに海外にまで伝わっていることをあらためて実感しました」と語る。「私自身も、今幸せになれる道を歩ませていただいているんだという、歓喜の思いでお念佛させていただきました。今後とも各事業やオンライン活動を通して、有縁の方へお念佛の道をお伝えしていきたいと思います」

(取材・文 關真章)