華頂特集記事Kacho

2021年2月号

静寂な空間で自分自身と
向き合う「お寺ヨガ」

 僧侶でヨガのインストラクター資格を持つガッソ有香さんは、自坊や日本各地のお寺で「お寺ヨガ」を開催し、お念仏とヨガの教えを多くの人々に伝えている。

仏教との繋がり

 近年、健康や美容、リラックス効果があるといわれ、世界中で流行しているヨガ。歴史は仏教よりもはるかに古く、約6000年前にインドで発祥したといわれている。元々は心を統一する自己鍛錬法で、心を観察し分析して苦しみから離れることが目的だった。今から約2500年前、ブッダガヤの菩提樹の下で瞑想をして悟りに至ったお釈迦様もヨガを取り入れていたとされ、仏教の経典にヨガは「瑜伽(ゆが)」として記されている。

 数多くあるヨガの種類の中で、最も一般的なのがマットの上でポーズをとる「ハタヨガ」である。現代ではヨガの一側面であるポーズ(アーサナ)のみが脚光を浴びるようになったが、伝統的なヨガの教えは、形を変えて今も実践されている。

ヨガとの出会い

 ガッソ有香さんは、山形県のお寺で生まれ、高校卒業後、僧侶の資格を取得するため大正大学に進学。お寺のために自分だからこそできることはないかと模索していた時、スポーツジムでヨガと出会った。大学で学んでいた仏教とヨガとの繋がりを見出すことができ、ヨガをもっと深く知りたいと思った。都内で開催されていたヨガ教室に片端から参加し、インストラクターの資格を取得。

 「将来、お寺でヨガ教室を開けば、若い人々がお寺に足を運んでくれるのではないか、ヨガをきっかけに仏教に興味を持ってくれるのではないかと考え、ワクワクした気持ちになりました」と当時を振り返る。「自坊に帰り、初めて開催したヨガ教室は家族に向けてでした。家族が楽しみながら受けてくれて、終わった後にスッキリした表情を見ることができ、とても嬉しかったことを覚えて
います」

 本場のインドでヨガを経験した際には、ヨガを意味する「つながり」をより深く感じることができたという。「ごちゃごちゃしているインドの街だが、全てのものが共存しています。私たちは皆が繋がっていることを忘れ、境界線を強く引くことで苦しみが生まれていると改めて気づきました」

お念仏とヨガ

 現在、ヨガクラスは週に6、7回ほど開催している。参加者の年齢は10代から80代までと幅広く、少人数からリモートだと50名の大人数まで、マタニティや親子対象などさまざまなクラスを教えている。

 ヨガを始める前には、お念仏を皆でお称えし、お寺の紹介やヨガの哲学、仏教とヨガの関係などのお話をする。「ヨガはポーズだけでなくもっと広い教えであるということを知っていただくための入り口になれたら」とガッソさんは願う。

 阿弥陀様に見守られながら、身体と呼吸を整え、自分自身と向き合う時間。お寺の穏やかで静寂な雰囲気が集中力を高め、安心感を与えてくれる。ヨガで体を動かすと、血液の循環が良くなり、呼吸が深まるため、最後に再びお念仏をお称えする時には、参加者の声が明らかに大きく、表情が穏やかになっているという。参加者からは「本堂でヨガをすると、背筋が伸び、心が静かになります」「敷居が高いと感じていたお寺が身近になりました」といった嬉しい声が聞かれる。

 思うように身体も動かないし、呼吸も乱れてしまい、集中力も続かない。そんな自分の至らなさを受け入れていくのもヨガ。「私にとってヨガは、お念仏の助業です。ヨガを通してお念仏の尊さをより感じることができました。そんな体験も多くの方にお伝えしていきたいですし、私自身もお念仏とヨガの実践をしっかりと続けていきたいと思っています」

法話の時間

(取材・文 田口真理)

 

プロフィール

ガッソ 有香(がっそ ゆうか)

1983年、山形県生まれ。山形教区誓願寺副住職。全米ヨガアライアンス(国際ヨガ資格)RYT500保持。全国各地で「お寺ヨガ」を開催し、ヨガを通して多くの方に仏教に触れていただくための活動をしている。