華頂特集記事Kacho

2021年3月号

「心田を耕す」
知恩院執事長 おてつぎ運動本部長 井桁雄弘

一日一日が大事

 皆さま、両手を合わせてみてください。しっかり合わせることが仕合わせ(幸せ)の心です。ずれてしまえば、不幸せとなりますからね。
「こだわらない心、とらわれない心、もっともっと仲良く…お念仏から始まる幸せ。同称十念」。
 本日は、目に見えないコロナウイルスが世界を席巻し、一向に収束のする気配すら見せないなか、知恩院へお参りいただき、有り難うございます。先日、御影堂の前で、お参りに来られたおばあさんが階段の段差に困っておられたのを見て、若いお嬢さんが3人ほど手伝っておられ、無事に焼香を済まされる姿を見たのです。コロナ禍は、3密を避けないといけないといわれますが、お互いに助け合うことは大切なことです。近寄ることも命がけ、助けられるのも命がけ、というおかしな時代です。

 つい先日、「おじいさん(夫)が亡くなった」と葬儀を営まれたおばあさんですが、その後しばらくして「愛犬も亡くなりました」と大変嘆き悲しんでおられました。犬でも猫でもみんな生きているものは必ず死ぬのです。若い時はそんなことは一切考えません。年を重ね、病気をした時は、いままで生かされた過去を考えて、また死ということを感じます。私たちは考える動物で人間ですから、生かされて、生まれさせていただいて往生できるまでの間、一日一日が大事でここまで来させていただいた。そしていくつで死ぬかは生まれた時のお約束。死ぬということはみんなご存じなんです。

 死というのは本当に大切で、いつ死ぬかがわからないから物事が前へ進み私たちは物を考えられます。今日一日、元気で暮らさせていただいたな、あるいは働かせていただいたな、と感じることこそが仏様のお蔭を感謝する気持ちなのです。

生かされている喜び

 お念仏について、ひと言、ここで申し上げておきます。一度、「念仏」と書いてみてください。今という字の下に心と書きます。その下に仏と書いてお念仏です。今の私たちの心、生かさせていただいている今、法然さまは「ただ一向に念仏すべし」とお導きになっています。

 今日、一日、無事に元気に過ごせたら、有難くお念仏のお蔭と感謝しなければなりません、嬉しい時、悲しい時、辛い時もすべてお念仏のお蔭で生かされているのです。いつも感謝の気持ちが心の中にあるようになります。嫌な日もあるでしょうが、感謝の気持ちを忘れずに、今日一日を喜び、腹の立つことがあれば、なぜ、こんなことになったのか、と反省して直すべきは直す。今日一日お互いに仲良く、手を合わせて、お念仏を申させていただく。そうして、極楽の浄土へ生まれさせていただくという信念。これが生かされている私たちの一番大切なことなんです。

 お念仏は、死ぬためのお念仏ではありませんよ。生かされている中にお念仏を申してゆくのです。今日の一日、生かされている喜び、また明日も生かさせていただく。明日は明日の仕事をさせていただく…という感謝の気持ち、これが私たちの心だと思います。心田を耕す大切なことなのです。

 本日は、お寒いなか、ご登嶺いただきました。阿弥陀さま、法然さまも、じっと見ておられたと思います。元気な間は、どうぞ元気で、働ける間は働いて生かされています。人間最後まで生きることが大事なんです。

 今日の一日に感謝し、明日を生かしてもらえる喜びに感謝し、兄弟姉妹、夫婦…全て仲良く、楽しく、生かされ、生かしていただく。こうした気持ちを、いつももっていただきますように。仕合わせ(幸せ)の手を合わせてくださいね。

同称十念

※1月9日に開かれた「おてつぎ文化講座」の要旨を採録しました。月刊「知恩」令和3年3月号に本稿をさらに詳しく掲載しています。

月刊誌「知恩」

※YOUTUBE 知恩院公式チャンネルにて文化講座を撮影した動画を公開します。ぜひご覧ください。

プロフィール

井桁 雄弘(いげた ゆうこう)

昭和9 (1934)年、大阪市生まれ。大阪教区相阪組・大圓寺住職。全日本仏教会理事や大阪府仏教会会長など歴任。平成27(2015) 年に総本山知恩院顧問会会長。同31(2019)年2 月から現職。