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2014年6月

知恩院の美を描く

中田 文花

中田 文花

現在、知恩院の機関誌『知恩』『華頂』で挿絵を担当している日本画家の中田文花さんは、お寺の法要儀式が大好きで、それらを題材にした絵画を描き続けることをライフワークとしています。

平成23年には東大寺で得度を受けられ、尼僧として新たな活動をはじめられました。

また、古典芸能にも精通され、雅楽や能楽、茶道、短歌などを嗜み、日本の伝統文化を一般に伝える活動も行っています。

(聞き手 編集部)

── 現在、月刊『知恩』の表紙絵や機関誌『華頂』の挿絵を飾っていただいていますが、知恩院と出会ったきっかけは何だったのでしょうか?

私は浄土宗の檀信徒の家に生まれました。残念ながら、浄土宗というとお葬式や法事のイメージしかなく、当初は全く興味がありませんでした。

若かった私は力強い南都仏教に惹かれ、奈良に通う青春時代でした。画家としても南都のお寺に育てていただき、得度もさせていただきました。

数年前、たまたま知恩院のお坊さんに趣味の龍笛(りゅうてき)を習うことになり、知恩院に通うことになりました。

実家が浄土宗ということすら忘れていましたが、あちこちから聞こえるお念仏の声は生まれた頃から聞いていましたので、とても懐かしい気がしました。

── 絵描きである中田さんから見た、知恩院の魅力とは何でしょうか?

知恩院とご縁ができ、初めて御忌(ぎょき)にお参りさせていただきました。そこで、声明(しょうみょう)の典雅なさま、丁寧な祈りの所作に胸を打たれました。また様々なお袈裟、色とりどりの衣に目を奪われました。南都仏教の文化に親しんで来た私にはどれも新鮮でした。

特に肩五条(かたごじょう)袈裟には一目惚れでした(笑)。小ぶりながらも華やかで、左右の趣が全く違う。落ちそうで落ちない危うさ。

「なんという名前?どんな構造?ほかにどんな色があるの?次はどの法要で見れるの?」

変わっていると笑われますが、何事も愛情をもって描かないと、人さまに感動をお伝えすることはできないと思います。

── 表紙絵に込めた想い、こだわりのようなものはありますか?

中田 文花私は絵描きですので、知恩院の美を描くことで、その魅力をお伝えしたいと思いました。しかし、決まりごとの世界ですから創作や想像で勝手なことは描けません。

そんな中でも、惜しみなく資料提供してくださった編集部の皆さん。所作を教えてくださったり、モデルになってくださった僧侶の皆さん。絵になる風景を選んで歩いてくださった念仏行脚の皆さん。知恩院の皆さんのおかげで描くことができました。

いつしか、お坊さんや職員さんに「取材がんばって!」とお声をかけていただくようになったのも、とても嬉しく思います。

何より、知恩院の風物そのものが美しいのであって、私はそれを切り取ったに過ぎません。

── これからの抱負、目指す目標はなんでしょう?

尼僧として絵を描くことが、私の布教活動だと思っています。お寺の情景を描くことで仏教文化の美しさ素晴らしさを後世に伝えていければ嬉しいです。

中田文花さんのイラストが掲載された知恩院の発行物

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月刊『知恩』の表紙

月刊『知恩』

2013年5月号

月刊『知恩』

2013年8月号

月刊『知恩』

2014年10月号

月刊『華頂』挿絵

月刊『華頂』挿絵

浄土宗の 基礎知識コーナー

年間行事ポスター

年間行事ポスター

2014年秋彼岸行事

プロフィール

中田 文花(なかた もんか)

1967年 大阪生まれ。学生時代は国文学専攻。院展、万葉日本画大賞展に出品。薬師寺の機関誌をはじめ宗派を問わず多くの仏教書の挿し絵を手掛ける。2011年東大寺にて得度。趣味は舞楽、龍笛、短歌。