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2016年3月

おてつぎ運動、50年目の再出発

知恩院執事 おてつぎ運動副本部長 堀田定俊

知恩院執事 おてつぎ運動副本部長 堀田定俊

知恩院執事 おてつぎ運動副本部長
堀田定俊

今年50周年を迎える「おてつぎ運動」。4年前から機構改革を進め、現代に即応する教化活動へと着実に変わりつつあります。いま「おてつぎ運動」が果たすべき役割とはなにか。おてつぎ運動副本部長の堀田定俊執事に話をうかがいました。

五十年の節目に思う

昭和41年に「おてつぎ運動」が知恩院の信仰運動として発足した頃は、物質的な復興がなしとげられていく一方で、精神的な荒廃が生じてきた時期に重なります。

戦後の日本は、必死になって物質的な豊かさのために努力してきました。終戦の翌年に生まれた私もその一人です。20代の頃は家庭を顧みずに企業戦士として会社に尽くしました。日本は確かに豊かになりましたけれど、核家族化したために仏壇のない家庭は増えましたし、都市部に人口が集中したせいで地域社会の温かいつながりも失われてしまいました。

お念仏の教えを正しく手から手へと「おてつぎ」して、檀信徒一人一人に正しい信仰を持ってもらうための「おてつぎ運動」は初期の指導者の意欲的な活動によって一気に広がりを見せましたが、今年で50年の節目を迎えるのにこの運動を知らない檀信徒もたくさんいます。近年は活動が停滞していたと反省しています。

しかし、私はいまこそ「おてつぎ運動」が求められていると考えています。平成24年に発表された内閣府の世論調査では、「物質的な豊かさ」よりも「心の豊かさ」を重視したいと回答した人が、64パーセントにものぼりました。これは、昭和47年に調査が開始されたときの2倍になります。

生まれ変わりつつある行事

昨年初めて実施した「御忌大会おまいりツアー」では、「ミッドナイト念仏in御忌」参加者のうち希望者約70名を 御忌大会の日中法要に案内した

昨年初めて実施した「御忌大会おまいりツアー」では、
「ミッドナイト念仏in御忌」参加者のうち希望者約70名を
御忌大会の日中法要に案内した

いま、「おてつぎ運動」が実施してきた行事を徹底的に見直しています。

以前は各地の寺院に檀信徒の青年会組織がありましたが、核家族化した今日では檀信徒のお子さん、お孫さんはたいてい別の地域に所帯を構えています。したがって、「青年の集い」はいま新しい形を模索しています。

「ミッドナイト念仏in御忌」をご存じでしょうか。これは、毎年4月18日、御忌大会初日に午後8時から翌朝7時まで三門楼上で夜を徹して行われる別時念仏会です。年々注目を集めて昨年はおよそ1,800人もの参加がありました。その大半が若い顔ぶれです。

せっかく知恩院に若い人々が来てくれているのですから、積極的にお念仏を「おてつぎ」しない手はありません。昨年は「ミッドナイト念仏in御忌」参加者たちに「昼間の御忌大会に一緒にお詣りしませんか」と声をかけたところ大変喜んでもらえました。また、今月行われる「春のライトアップ2016」では阿弥陀堂で「聞いてみよう!お坊さんの話」という時間を設けます。

他にも、信行奉仕団やこども奉仕団などの行事はいずれも信仰運動として喜ばれてきましたが、時代即応の教化実践であり続けられるように内容の充実を進めています。たとえば、今年の成人式では、「着物の着付けをしてほしい」という学生の声に応えるため、社団法人全日本きもの振興会と協働してこれを実現いたしました。

いま伝えたい「祈り」の心

私たちが子供のころは木や竹の棒を片手に「チャンバラごっこ」をして遊びました。叩かれると涙が出るほど痛いです。テレビゲームの「チャンバラごっこ」なら痛い想いをしないですみますが、痛い想いをすればこそ他人の痛みもわかります。塾に行って勉強する余裕などありませんでしたが、家庭の仕事を分担して風呂焚きや炊事などしているなかで助け合う心の大切さを学びました。

私たちは一人で生きているわけではなく、多くの命のつながりのなかに生かされています。このことはいまも昔も変わりません。殺伐とした時代だと言われますが、本堂の阿弥陀さまの前で自分を見つめるきっかけがあれば、命を大切にしようという心、助け合って生きていこうという心を必ず持てるはずです。

だから、「おてつぎ運動」では子どもたちと「いただきます」と一緒に称えることを大切にしています。また、若い人たちと接するときには阿弥陀さまの光のもとで日々の生活を反省してもらい、ご年配の方々にはお念仏を称えて極楽へと往生できることを感じていただくのです。迷い多き私たちは、阿弥陀さまへの祈りをしっかりと持ってこそ、確かな足取りで生きられます。一人一人が阿弥陀さまへの祈りのなかに日々を生きてくだされば、家庭も社会もきっと清らかなものになっていくと私は信じています。

総本山知恩院おてつぎ運動50周年記念大会

「ただ一向に念佛すべし」
~手から手へ 人から人へとお念佛の輪広め50年~
平成28年11月12日(土)

これまでおてつぎ運動を支えていただいた全国の檀信徒の皆さまにご参集いただき、
法然上人の御前において共々にお念仏をお称えしましょう。

  • 12時~16時 法然上人御堂において別時念仏会
  • 14時~14時45分 御門跡猊下によるご講話

お問い合わせ:おてつぎ運動本部 075-541-5142

プロフィール

堀田 定俊

昭和21年9月16日生まれ。鹿児島大学卒。
昭和62年より福岡教区東筑組常福寺住職をつとめる。社会福祉法人若松児童ホーム元理事長、民生・児童委員(平成元年〜24年)、福岡教区教化団長(平成22年〜24年)。現在、浄土宗宗議会議員(平成24年〜)、保護司。
剣道七段。