御法語
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念仏の行を信ぜざらん人に会いて、御物語り候わざれ。いかに況や宗論候うべからず。強ちに異解異学の人を見て、これを侮り、謗ること候うべからず。いよいよ重き罪人になさん事、不便に候うべし。
極楽を願い、念仏を申さん人をば、塵刹の外なりとも、父母の慈悲に劣らず思し食すべきなり。今生の財宝乏しからん人をば、力を加えさせ給うべし。もし少しも念仏に心を掛け候わん人をば、いよいよ御勧め候うべし。これも弥陀如来の本願の宮仕いと思し食し候うべし。
現代語訳
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念仏の行を信ぜざらん人に会いて、御物語り候わざれ。いかに況や宗論候うべからず。強ちに異解異学の人を見て、これを侮り、謗ること候うべからず。いよいよ重き罪人になさん事、不便に候うべし。
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念仏の行を信じていない人に出会っても、話し込んではなりません。まして宗派同士の論争などすべきではありません。解釈や学問の異なる人を見て、むやみにその人を軽んじ、誹謗することがあってもなりません。〔相手を〕ますます重罪の人にするのは、気の毒でありましょう。
※いよいよ…なさん事=宗論の末、念仏の教えを誹謗するという重罪を、相手に犯させること。
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極楽を願い、念仏を申さん人をば、塵刹の外なりとも、父母の慈悲に劣らず思し食すべきなり。今生の財宝乏しからん人をば、力を加えさせ給うべし。もし少しも念仏に心を掛け候わん人をば、いよいよ御勧め候うべし。これも弥陀如来の本願の宮仕いと思し食し候うべし。
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極楽を願い、念仏を称える人がいれば、無数の世界のかなたにあっても、父母の慈愛に劣らずお思いになるべきです。この世での財産が乏しい念仏者には援助なさって下さい。もしわずかでも念仏に心を寄せている人には、ますます〔念仏を〕お勧め下さい。これも阿弥陀如来の本願へのご奉仕とお考えになって下さい。
※宮仕い=恩返し。本来、宮中に仕えること。