法然上人のお言葉― 元祖大師御法語 ―

御法語

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現代語訳

往生おうじょうの行ぎょう、多おおしといえども、大おおいに分わかちて二ふたつとし給たまえり。一ひとつには専修せんじゅ、いわゆる念仏ねんぶつなり。二ふたつには雑修ざっしゅ、いわゆる一切いっさいのもろもろの行ぎょうなり。上かみにいう所ところの定散じょうさん等とうこれなり。

往生するための行は多いけれども、〔善導大師は〕大きく分けて二つとなさいました。第一は専修、つまり念仏であります。第二は雑修ざっしゅ、つまり〔念仏以外の〕あらゆる修行であります。前に述べた定善と散善がこれであります。

※上にいう所＝原典ではここよりも前に説明されているのでこういう。
※等＝定善・散善が複数であることを意味する。それ以外の善が加わるわけではない。後篇第七章「等」参照。

往生礼讃おうじょうらいさんに云いわく、「若もし能よく上かみの如ごとく念々相続ねんねんそうぞくして、畢命ひつみょうを期ごとせば、十じゅうは即すなわち十生じゅうしょうじ、百ひゃくは即すなわち百生ひゃくしょうず」。専修せんじゅと雑行ぞうぎょうとの得失とくしつなり。

〔善導大師の〕『往生礼讃』には「もしもよく、前に述べたように、念仏を続けたまま命を終えることができた人は、十人いればそのまま十人が往生し、百人いればそのまま百人が往生する」とあります。専修の得と雑修の失とを述べた文です。

※若し…生ず＝『浄全』四・三五六頁下。
※期＝期限。目標。

得とくというは、往生おうじょうする事ことを得う。謂いわく、「念仏ねんぶつする者ものは、十じゅうは即すなわち十人じゅうにんながら往生おうじょうし、百ひゃくは即すなわち百人ひゃくにんながら往生おうじょうす」というこれなり。

「得」というのは、往生することを得るということです。すなわち「念仏する者は、十人が、そのまま十人すべて往生し、百人が、そのまま百人すべて往生する」というこのことです。

失しつというは、謂いわく、往生おうじょうの益やくを失うしなえるなり。雑行ぞうぎょうの者ものは、百人ひゃくにんが中なかに稀まれに一いち二人ににん往生おうじょうする事ことを得えて、その外ほかは生しょうぜず。千人せんにんが中なかに稀まれに三さん五人ごにん生うまれて、その余よは生うまれず。

「失」というのは、すなわち往生という利益を失うということです。雑修の者は、百人の中で稀まれに一人、二人、往生することができますが、その他の者は往生できません。千人の中で、まれに三人、五人が往生しますが、その他の人は往生しません。

専修せんじゅの者ものは、皆みな生うまるる事ことを得うるは、何なにの故ゆえぞ。阿弥陀仏あみだぶつの本願ほんがんに相応そうおうせるが故ゆえなり。釈迦如来しゃかにょらいの教おしえに随順ずいじゅんせるが故ゆえなり。雑業ぞうごうの者ものは生うまるること少すくなきは、何なにの故ゆえぞ。弥陀みだの本願ほんがんに違たがえる故ゆえなり。釈迦しゃかの教おしえに随したがわざる故ゆえなり。

専修〔念仏〕の者がみな往生することができるのはなぜでしょうか。阿弥陀仏の本願と一致しているからであり、釈尊の教えに随うからです。雑修の者が往生することが少ないのはなぜでしょうか。阿弥陀仏の本願に反するからであり、釈尊の教えに随わないからです。

※雑業＝「雑修」に同じ。

念仏ねんぶつして浄土じょうどを求もとむる者ものは、二尊にそんの御心みこころに深ふかく適かなえり。雑修ざっしゅをして浄土じょうどを求もとむる者ものは、二仏にぶつの御心みこころに背そむけり。

念仏を行って極楽浄土を求める人は、釈迦・弥陀二尊の御心みこころに深く適かなっています。雑修を行って浄土を求める人は、二仏の御心みこころに背いています。

善導和尚ぜんどうかしょう、二行にぎょうの得失とくしつを判はんぜること、これのみにあらず。観経かんぎょうの疏しょと申もうす文ふみの中うちに、多おおく得失とくしつを挙あげたり。繁しげきが故ゆえに出いださず。これをもて知しるべし。

善導和尚が二行の得と失とを判定されたのは、これに止とどまりません。『観経疏』という書物の中に、多くの得と失とを挙げておられます。多いので引用は致しません。ここでの説明によってご理解下さい。

※多く得失を挙げたり＝善導『往生礼讃』（『浄全』四・三五六頁下～三五七頁上）。専修における四得と、雑修における十三失を挙げている。