用語集
さ
- 在家(ざいけ)
- 出家者に対して在俗の人。
- 雑修(ざっしゅ)
- 念仏以外の様々な行(雑行)を修めること。
- 三縁(さんえん)
- 親縁、近縁、増上縁。すなわち阿弥陀仏の念仏者に対する、親しい関係、近い関係、力を加えて利益を与える関係。
- 三界(さんがい)
欲界(欲望と苦が盛ん)・色界(苦しみはないが肉体がある)・無色界(苦しみも肉体もないが覚ってはいない)という三種の迷いの境界。
- 三業相応(さんごうそうおう)
数珠を繰り(身業)、心に念仏しようと思い(意業)、口に念仏を称える(口業)という三業の調和。前編第十七章参照。
- 三従(さんじゅう)
- 女性が、未婚の時は父に従い、結婚すれば夫に従い、夫が死ねば子に従うこと。当時の社会通念に従った表現。
「さんしょう」とも読む。 - 三心(さんじん)
念仏者に不可欠な三種の心がまえ。①至誠心(真実心)②深心(深く信じる心)③廻向発願心(自他の善根功徳を振り向け、往生を願う心)。前篇第九、第二十三章参照。
- 三途(さんず)
- 苦しみの多い地獄・餓鬼・畜生の境界。三悪道。三悪趣。
- 三千世界(さんぜんせかい)
- 太陽と月のある世界の千倍を小千世界とし、その千倍を中千世界とし、それを千倍したもの。娑婆世界はその一つ。三千大千世界。
- 三念五念(さんねんごねん)
- 善導『法事讃』下(『浄全』四・二五頁下)。
- 三福業(さんぷくごう)
- 世福(孝養父母・奉事師長・慈心不殺・修十善業)、戒福(受持三帰・具足衆戒・不犯威儀)、行福(発菩提心・深信因果・読誦大乗・勧進行者)。
- 三宝滅尽(さんぼうめつじん)
末法一万年の後、仏教が滅びること。法滅。後編第四章参照。
- 三昧(さんまい)
- 「定(精神集中)」を意味する梵語「サマーディ(samādhi)」の音写。
し
- 持戒(じかい)
戒(悪い行いを慎み、善い行いを習慣づける修行)を守ること。前篇第二章参照。
- 止観(しかん)
天台宗の『摩訶止観』の修行。「止」は三昧、「観」は智慧の意で、それぞれ三学(前篇第二章参照)の定・慧に当たる。
- 地獄・餓鬼・畜生(じごく がき ちくしょう)
- 悪業の結果として堕ちる苦痛の多い境界。
- 地獄八熱(じごくはちねつ)
等活・黒縄・衆合・叫喚・大叫喚・焦熱・大焦熱・阿鼻(無間)という八つの地獄。
- 四修(ししゅ)
- 「念仏を修める四種の方法、態度」の意。安心(三心)、起行(五種正行)に対して作業と呼ばれる。
- 四重(しじゅう)
- 邪婬、偸盗、殺人、妄語(私は覚ったと嘘をつくこと)または大妄語(自分が達していない修行の果位を偽ること)という、教団追放に値する出家僧の大罪。四波羅夷。四重罪。
- 四十八願(しじゅうはちがん)
- 法蔵菩薩が衆生を救うために誓った四十八の願。
- 四十八軽(しじゅうはちきょう)
- 十重禁戒より軽い罪をいましめた戒。
- 四生(ししょう)
胎生・卵生・湿生(湿気から生まれる)・化生(忽然と生まれる)という四種の生まれ方。
- 至誠心(しじょうしん)
真実の心。後篇第九章参照。
- 自身安穏(じしんあんのん)
- 「念仏者が身心ともに平穏無事で健やかなこと」の意。
- 十声一声(じっしょういっしょう)
- 十方(じっぽう)
- 四方とその中間、及び上下という十方向にあるすべての世界。
- 慈悲(じひ)
- 慈は衆生の幸せを願う慈しみ(与楽)。悲は衆生が苦から逃れることを願う憐れみ(抜苦)。
- 慈悲加祐(じひかゆう)
「阿弥陀仏は慈悲の心をもって臨終の念仏者に助力する」の意。法然上人に帰依した上野国(群馬県)の御家人、大胡太郎(?-一二四六)の、念仏の心がまえについての問いに上人が答えたもの。
- 舎衛の三億の家(しゃえのさんのくのいえ)
舎衛国の人口九億人のうち、三億人が釈尊の説法を聞き、三億人がその名のみを聞き、残り三億人がその説法も名も聞かなかったという。
- 釈迦の付属(しゃかのふぞく)
釈尊が弟子阿難に「念仏の教えを後の世に伝えよ」と託されたこと。後篇第六章参照。
- 邪義(じゃぎ)
- 誤った解釈や教義。
- 釈(しゃく)
- 善導『往生礼讃』(『浄全』四・ 三七六頁上)。
- 娑婆世界(しゃばせかい)
「煩悩や苦しみに耐える世界」を意味する梵語「サハー(sahā)」(あるいは「サバー(sabhā)」)の音写。意訳「忍土」「忍界」。
- 十悪(じゅうあく)
- ①殺生(生き物を殺すこと)②偸盗(盗み)③邪婬(不正な男女関係)④妄語(嘘)⑤両舌(人の仲を裂く言葉)⑥悪口(暴言)⑦綺語(無意味な言葉)⑧貪欲(貪り)⑨瞋恚(憎悪)⑩邪見(因果関係の否定)という十種の悪業。
- 酬因感果(しゅういんかんか)
- 善悪の行為や修行という原因の報いとして、苦楽や覚りという結果をこうむること。
- 十三観(じゅうさんがん)
- ①日想観②水想観③地想観④宝樹観⑤宝池観⑥宝楼観⑦華座観⑧像想観⑨真身観⑩観音観⑪勢至観⑫普観想観⑬雑想観。
- 十重(じゅうじゅう)
- 十重禁戒。①殺生②偸盗③邪婬④妄語⑤酤酒(酒を売る)⑥説四衆過(出家者・在家者の過失を説く)⑦自讃毀他(自分をほめて他人をけなす)⑧慳惜加毀(ものおしみして乞う人をけなす)⑨瞋心不受悔(怒って相手の謝罪を受け入れない)⑩謗三宝(仏・法・僧を誹謗する)という重い罪をいましめた戒。
- 十六門記(じゅうろくもんき)
『黒谷源空上人伝』。聖覚(一一六七-一二三五)作と伝える。上人の行状を十六章に分けているためにこの名がある。
- 出世本懐(しゅっせほんがい)
- 「釈尊がこの世にお出ましになった本来の目的」の意。天台宗では『法華経』を説くこととされ、浄土宗では念仏の教えを説くこととされる。
- 鷲峰(じゅぶ)
印度の東方、マガダ国の王舎城郊外において釈尊が住まいとされた山。
- 順逆二縁(じゅんぎゃくにえん)
- 「浄土宗の信仰をめぐる友好的な関係と、敵対的な関係との二つ」の意。いずれも、ともに極楽に往生する縁となる、という趣旨。
- 定(じょう)
心を静めて一つの対象に集中し、散乱させない修行。三昧。
- 正・像・末の三時(しょう・ぞう・まつのさんじ)
- 正法(釈尊が亡くなって後、教えも行も覚りもある時代)、像法(正法の次で、教えと行はあるが、覚りのない時代)、末法(像法の後の一万年で、教えはあるが行も覚りもない時代)の三つ。
- 正行(しょうぎょう)
①読誦②観察③礼拝④称名⑤讃歎供養の五種正行。後篇第七章参照。
- 荘厳(しょうごん)
- 宝林、宝華、宝池、宝地などの美しい飾りつけ。見事な配置。
- 上根上智(じょうこんじょうち)
- 能力と智慧の勝れた人。
- 定散(じょうさん)
『観無量寿経』に説かれる定善(心を集中して浄土に関わる十三種の対象を観想する修行)と散善(平常の心のまま行う善行や修行)。後篇第六章参照。
- 生死(しょうじ)
生類が地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人・天という六道において誕生と死を繰り返す迷いの有様。輪廻。
- 生死滅度(しょうじめつど)
- 迷いの境涯を滅ぼし、超え渡ること。
- 小乗(しょうじょう)
- 大乗の視点から、自己の解脱だけを目的とする声聞・縁覚の教えをおとしめる呼び名。
- 聖浄二門(しょうじょうにもん)
- 「智慧を極めて覚る聖道門と、愚痴に還って極楽に往生する浄土門という二つの教え」の意。浄土宗で、一切の仏教をこの二つに分類するのは、道綽『安楽集』巻上(『浄全』一・六九三頁上)による。
- 正定の業(しょうじょうのごう)
「本願の中で阿弥陀仏によってまさしく選定された往生のための行い」あるいは、「往生がまさしく決定する行い」。
- 精進(しょうじん)
- 「努力」の意。
- 正雑二行(しょうぞうにぎょう)
「阿弥陀仏に縁の深い五種正行と、縁の浅い雑行との二種の行」の意。原典は『選択集』の眼目を述べた第十六章の一節(『浄全』七・七○~七一頁)。後篇第七章参照。
- 聖道門(しょうどうもん)
自らの能力に頼って修行を完成させ、この世界で覚りを開くことをめざす仏教。後篇第一章参照。
- 浄土の楽しみ(じょうどのたのしみ)
源信『往生要集』では十種(浄土十楽)にとりまとめられている(『浄全』十五・五四頁上~六四頁下)。すなわち①聖衆来迎楽(阿弥陀仏等の聖者の集団が往生人を迎えに来る楽しみ)②蓮華初開楽(往生人の乗った蓮が極楽の蓮池で初めて開く楽しみ)③身相神通楽(身に三十二相が具わり、五神通を得る楽しみ)④五妙境界楽(色・声・香・味・触という五種の対象がみな見事である楽しみ)⑤快楽無退楽(快感が無くなることのない楽しみ)⑥引接結縁楽(縁を結んだ人を迎える楽しみ)⑦聖衆倶会楽(菩薩たちと会える楽しみ)⑧見仏聞法楽(仏に直接お会いして教えを聞く楽しみ)⑨随心供仏楽(思い通りに仏を供養する楽しみ)⑩増進仏道楽(修行が進む楽しみ)。なお第三楽のうち「五神通」とは①神境通(遠くにまで飛行し、化身を造る能力)②天眼通(遠くのものを見る能力)③天耳通(遠くの音声を聞く能力)④他心通(他人の心を読む能力)⑤宿命通(過去世を思い起す能力)。
- 浄土門(じょうどもん)
阿弥陀仏の本願に頼って称名念仏し、浄土に往生して覚りをめざす仏教。後篇第一章参照。
し
- 称念(しょうねん)
- 口に念仏を称えること。観念に対する。称名念仏。
- 正念(しょうねん)
- 正常な精神状態。
- 乗仏本願(じょうぶつほんがん)
- 「阿弥陀仏の本願の力に乗じて往生すること」の意。
- 助業(じょごう)
- 正定業(称名正行)を助ける行い。五種正行のうち称名正行を除く。
- 所作(しょさ)
- なすべきこと。勤め。
- 助正分別(じょしょうふんべつ)
- 「善導大師が五種正行を正定業と助業とに分けられたこと」の意。
- 諸仏証誠(しょぶつしょうじょう)
- 「あらゆる世界の無数の諸仏が、念仏往生の教えの正しさを証言されること」の意。
- 尸羅(しら)
- 「戒(よい習慣)」を意味する梵語「シーラ(śīla)」の音写。
- 自力(じりき)
- 自分の修行の力。またそれに頼ること。
- 信行双修(しんぎょうそうしゅ)
- 「信と行との両者を片寄りなく修める」の意。
- 信寂房(しんじゃくぼう)
- 朝日山大日寺の住僧。後に洛東鳥部野に住んで法然に随う。『勅伝』巻四三(『浄全』十六・六一六頁上~六一七頁下)参照。
- 深心(じんしん)
- 「深く信じる心」の意。二つの側面(二種深信)がある。三心(至誠心・深心・廻向発願心)の一つ。
- 深信因果(じんしんいんが)
- 「因果の道理(特に善因楽果・悪因苦果の関係)を深く信じること」の意。
- 塵刹(じんせつ)
塵のように数え切れない程の国土、世界。「刹」は「国土」を意味する梵語「クシェートラ(kṣetra)」の音写。
- 親縁(しんねん)
- 「阿弥陀仏の、念仏者に対する、親子のような親しい関係」の意。
- 信謗(しんぼう)
- 仏の教えや救いなどを、信じることと謗ること。
す
- 随順仏教(ずいじゅんぶっきょう)
- 「仏の教えに随うこと」の意。特に悪を止めて念仏することを勧める。
- 数遍(すへん)
- 数を定めた念仏。また念仏の数。
せ
- 勢至(せいし)
- 「絶大な威力を得た者」の意。観音と共に阿弥陀仏に仕え、智慧にすぐれた菩薩。
- 星霜(せいそう)
- 歳月(一年に一周する星座と年ごとに降りる霜に由来する)。
- 世自在王如来(せじざいおうにょらい)
- 法蔵菩薩を指導した仏。
- 摂取不捨の誓い(せっしゅふしゃのちかい)
『観無量寿経』「真身観文」の一節(『浄全』一・四四頁)と第十八「念仏往生の願」とを結びつけた用語。前篇第二十六章「成仏の…給うなり」、後篇第二十五章「不捨の誓約」参照。
- 善巧方便(ぜんぎょうほうべん)
- 仏・菩薩が衆生を導く巧みなてだて、方法。
- 善業(ぜんごう)
善い行い。
- 善根(ぜんこん)
- 将来に好ましい結果を招く原因。
- 善趣(ぜんしゅ)
- 六道の中の阿修羅・人・天。
- 専修(せんじゅ)
- 専ら念仏のみを修めること。
- 専修念仏(せんじゅねんぶつ)
- 「専ら念仏のみを修めること」の意。
- 禅定(ぜんじょう)
「定」に同じ。
- 闡提(せんだい)
- 「仏法を謗り仏になる縁がない者」「善根を断った者」を意味する梵語「イッチャンティカ(icchantika)」の音写、「一闡提」の略。
- 善知識(ぜんちしき)
- 仏教のすぐれた指導者。
- 選択本願(せんちゃくほんがん)
「法蔵菩薩が本願の中で多くの修行のうち念仏を選択して往生行と定められたこと」の意。
- 善導和尚(ぜんどうかしょう)
- 法然上人が専ら依りどころとされた、中国唐代の浄土教大成者(六一三―六八一)。
そ
- 僧祇(そうぎ)
「無数」という意味の梵語「アサンキヤ(asaṃkhya)」の音写「阿僧祇」の略。菩薩が仏となるまでの修行期間は「三阿僧祇百大劫」である。
- 雑行(ぞうぎょう)
- 五種正行以外の一切の修行や善行。
- 相好(そうごう)
- 仏の身体に具わる勝れた特徴。通常「相」は三十二種の主要な特徴、「好」は八十種の副次的な特徴。ただし「真身観文」では「相」が八万四千、「好」はそれの二乗である。
- 疎相(そそう)
- 粗末・粗略なさま。『勅伝』や底本では「疎想」とある。