知恩院の建造物

御廟京都府有形文化財、内部非公開
法然上人のご遺骨をご奉安する廟堂。方三間の宝形造本瓦葺で、周囲には唐門のある玉垣がめぐらされています。法然上人は建暦2年(1212)、この地にあった大谷の禅房でご入滅されましたが、その後、門弟たちによって廟堂が建てられ、ご遺骨がご奉安されました。現在の御廟は、慶長18年(1613)常陸国土浦藩主 松平伊豆守信一の寄進を得て改築されたものです。
廟堂の蟇股(かえるまた)には「雲に龍」「桐に鳳凰」「梅に鶯」「雲に麒麟」「松に鶴」「桜に鳥」「孔雀に牡丹」など、桃山様式の華麗な彫刻が施されており、法然上人のご生涯を偲ぶにふさわしい静粛さと格調のある建物です。
御廟の手前には、法然上人の御廟にお参りするための拝殿があります。宝永7年(1710)に建て添えられた檜皮葺のお堂で、法然上人を間近に拝することができることから、全国から訪れた檀信徒によりお念仏の声が絶え間なく響き渡っています。
また拝殿では、毎月、法然上人のご命日である25日に別時念仏会が行われます。
平成の大修理
広大な知恩院境内の最上段に位置する御廟は、専修念仏の本拠であり、法然上人入寂の聖跡です。800年大遠忌では、御遺骨をお祀りする「御廟堂」前面の「唐門」、そして参拝のための「拝殿」のすべてが修復されました。
(工期/平成18年11月~平成20年春)

彩色復元をおこなった御廟堂欄間
御廟堂
本瓦葺屋根の傷んだ部材の交換、および瓦の葺き替え(一部は古瓦を再利用)のほか、欄間(らんま)や蟇股(かえるまた)の彩色復原、錺(かざり)金物の漆塗りや金箔押しなどを実施しました。
唐門
腐朽した野地板の交換と檜皮の葺き替えなどの屋根工事を、木部の虫食い穴を樹脂で充填し補修しました。また脇障子竹の節欄間の彩色復原・木口(こぐち)塗り直しなどの修復を行いました。
拝殿
唐門と同じく、檜皮の葺き替えや木工事、金物の塗り直しのほか、内外壁や亀腹の左官工事などを行いました。


コラム賜蓮
建暦2年(1212)、ある女性が3月14日の夜に不思議な夢を見ました。 ある僧が、「法然上人の御廟にお参りする人には、極楽往生する人のしるしに、この蓮華一本を差し上げましょう。このことを、あまねく人々に伝えなさい。」とおっしゃいます。 目を覚まし、御廟におまいりしてみると、まったく夢に見た通りの風景。
この言い伝えから、御廟堂は別名を「賜蓮堂(しれんどう)」とも言います。
『法然上人行状絵図』巻三十八