国宝・御影堂ものがたり
第7回御影堂の建築様式 (2)
御影堂内部の空間に目を向けてみましょう。
大まかにいうと、法然上人の御影(みえい)を安置する内陣(ないじん)を中心に、その左右に脇陣(わきじん)、正面側に外陣(げじん)が設けられます。外陣は参拝のための空間として広くとられており、多くの方々を受け入れることができます。
内陣や脇壇廻りの柱、壁などには金箔などの装飾が施され、厳かななかに煌びやかな雰囲気を放っています。また、天井も、内陣の須弥壇(しゅみだん)上では二重折上小組格天井(にじゅうおりあげこぐみごうてんじょう)という、とても手の込んだつくりとなっています。
外陣と、内陣・脇陣との境には、蔀戸(しとみど)(格子の吊り上げ戸)が入れられています。常に吊り上げられた状態となっているため、内陣がよく見えて、とても身近に感じられます。また、内陣や脇陣のまわりにはほとんど仕切りがないので、御影堂全体に空間としての一体感が感じられます。これが、このお堂の大きな特徴となっています。
現在の場所に御影堂が建つ江戸時代の初めまで、現在の勢至堂(室町時代・1530年の建立)が御影堂として使われていました。勢至堂は住宅風の雰囲気の強い外観を持ち、内部では現在の御影堂と同様に外陣との境に蔀戸が入れられています。蔀戸は、寝殿造り(しんでんづく)などの貴族住宅に起源を持つ建具で、あたかも内陣廻りが法然上人のお住まいであるかのような印象を受けます。現在の御影堂にも、こういった感覚が踏襲されているのではないかと感じられます。
「意匠や技術の面においてきわめて優れ完成度も高く、江戸時代初期における徳川家の大造営を示す代表として位置づけられ、我が国の建築史上きわめて高い価値がある。また、総本山本堂に相応(ふさわ)しい壮大な規模で宏壮かつ優麗な内部を創出し、我が国の社会に広く影響を及ぼした浄土宗の中心建築として、特に深い文化的意義を有している。」(国宝指定の説明文より)、このような評価により、御影堂は、平成14年に国宝に指定されました。