国宝・御影堂ものがたり
第8回後世に受け継がれる御影堂 (1)
これから、約8年間をかけて御影堂の保存修理を行います。
御影堂は明治の七百回遠忌の際に比較的大きな修理を受けていますが、それから約百年を過ぎ、屋根を始め随所に傷(いた)みが出てきています。工事中、御影堂は素屋根(すやね)とよばれる仮設の建物にすっぽりと覆われます。素屋根は鉄骨造で、高さは41メートルとなり、京都観光の中心である東山の山麓において、ひときわ目立つ存在となることでしょう。
素屋根ができると、いよいよ御影堂本体の修理に取り掛かります。屋根の瓦はいったんすべて降ろします。小屋組(こやぐみ)(※屋根を支える骨組み)は、長年の重さで歪んできており、屋根は波打って見えます。小屋組には明治の修理の際に大胆な補強が施されましたが、必ずしも万全とはいえないため、綿密な検討が必要となります。また、軒先(屋根の先端部分)には、雨漏りで腐った部分が多く見られ、修理はこのあたりまで及ぶ見込みです。瓦の多くは新しく替えられることになりますが、その重さを軽減することもひとつの課題となります。
その他、縁の板の張り直し、緩んだ扉の修理、内部の漆や金箔の修理等を行います。
修理に際しては、傷んだ箇所を直すことはもちろんですが、国宝として、文化的価値を末代まで伝えるという使命を帯(お)びた建物であることを強く意識する必要があります。いったん取り外した材料でも、使えるものは再度生かすことが原則です。
修理ではまた、建物を「解剖」するわけですから、どんな技術が使われているか、どんな歴史をたどってきたかを探る、さらには建設に携わった人々の思いを汲み取る絶好の機会となります。「直す」ことと並行して、「調べる」ことも私たちの重要な作業となります。